山西省大同の裏社会で生きるビン(リャオ・ファン)と恋人のチャオ(チャオ・タオ)。対抗組織に襲われたビンを助ける為、チャオは銃を発砲する。5年後、景気を終えて出所したチャオはビンと連絡を取ろうとするが、彼からの返信はない。チャオはビンが働いているという長江を訪れるが。監督はジャ・ジャンクー。
 2001年から2008年まで、一組の男女の行方を追う。とは言えメインはチャオだ。チャオを演じるチャオ・タオが本当に素晴らしく、ずっと目を離せない。冒頭、若い衆に声を掛けられ振り向いた瞬間のギラっとした表情、ヤクザの「姐さん」としての立ち振る舞いの軽やかさや凄み。そして経年してやつれ感は漂い、何もなくしてもなお立ち向かうしたたかさと危うさ。10年間のチャオの変化の演じ分けが見事だった。
 本作はジャ・ジャンクー流の仁侠映画、女仁侠ものだろう。チャオは自分たちは渡世人だと度々口にする。一方、チャオは2人の関係に何か大きな岐路が訪れる、何か決断を下さねばならない瞬間がくると、自分からは切り出さずチャオが切り出すように仕向ける。ちょっとずるいのだ。ヤクザの親分としての度量はあるが、後半にはぼろぼろと弱さを見せていく。チャオはビンの一番ぶいぶい言わせていたいい時代を共にしたパートナーだ。そんな彼女に落ちぶれた自分の姿を見せるのは辛いだろう。しかしチャオ側にしてみたら、そういう時こそ支えあいかっこ悪さもさらけ出すのがパートナーというものではないかと言いたくなるだろう。
 チャオは一貫してブレがない。一度気にかけた相手は、たとえ情がなくなっても最後まで面倒を見るのが彼女の仁義だ。渡世人とはそういうものだと彼女は考えているのだろう。損得重視の世の中では損な性格、「かしこい」やり方ではないという人もいるだろう。しかしそんな彼女のりりしさが素敵だった。

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