1970年代、紛争の真っ只中にある北アイルランドではツアーにやってくるミュージシャンは激減し、ナイトクラブにも人は来なくなっていた。そんな中DJを続けるテリー・フーリー(リチャード・ドーマー)は、ベルファストにレコード店「GOOD VIBRATIONS」を開店する。ある日チラシを持ち込んできた若者に興味を持ったテリーは、興味本位で地元のライブハウスを覗く。そこで演奏していたパンクロックとそれによって団結し世の中に抵抗す若者たちに心打たれたテリーは、自ら音楽レーベルを立ち上げ彼らのレコードをリリースする。テリーの元には様々なバンドが集うようになるが。監督はリサ・バロス・ディーサ&グレン・レイバーン。実話を元にしたストーリー。クライマックスとなる2つのライブシーンに「いいライブ」感が満ち満ちておりちょっと泣いた。
 70年代~80年代初頭のアイルランドなのでIRAによるテロが続発しており、テリーのかつての友人たちも主義主張により袂を分かっていく。テリーは共産主義者や起業家や芸術家、様々な人たちがカソリックかプロテスタントかに二分されてしまったとぼやく。中立は許されず、どちらにも属さないテリー自身もかつての仲間に狙われ始めるのだ。そんな中、ベルファストでレコード店を開くという計画はかなり能天気に思えただろう。カソリックもプロテスタントも関係ない、ロックへの愛は境界を越え生きる希望になるのだという彼の生き方に、目を覚ませという人もいる。しかしテリーは無鉄砲とも言える行動力と楽天性でどんどん実現していく。一緒にいる人は経済的にも精神的にもかなり大変そうだけど、彼みたいな人が世の中を変えていくのかもしれないなと思った。
 レコード店立ち上げの時にカソリック派とプロテスタント派を集めたときのやりとりや、バンドのツアー中に「カソリックとプロテスタントがつるんでいるのか」と警官に驚かれる様は、彼の理想が現実になった瞬間だろう。それはすぐにとん挫するかもしれないが、そしたらまたやり直せばいいのだ。エンドロール前のテロップで実在のテリーのその後が説明されるが、「やりなおせばいい」精神が一貫していて笑っちゃうくらい。なかなかここまでできないよな。負けつつ勝つ、みたいな生き方だ。
 とは言え、テリーが目の前の責任や現実から逃げがちな人だというのも、金策や妻子との関係に如実に表れている。ここは決して褒められたものではない。面白いもの、すごいものの方に夢中でそれ以外には目がいかない。彼はパンクキッズらの信頼を得るが、彼自身も子供だったからだろう。もうちょっと立ち回りや周囲への目配りが「ちゃんとした大人」だったらレーベルもショップも長持ちしたかもしれないけど、パンクキッズらの信頼を得られていたかはわからない。