山極寿一著
 人間の男、女という存在は生物としてのオス・メスの違いだけではない。社会的・文化的に区別されたジェンダーである。いわゆる「男らしさ」、男性像とはこれまでの文化・習慣の中で形成されたもので、社会が急速に変化していく中では、段々「男らしさ」が硬直し男性も女性も苦しめることになる。そもそも男、オスの特徴とはどういうものなのか?霊長類学者であり著者が霊長類の生態から、「男」が形成される軌跡を追う。
 同じサルの仲間でもオスのふるまいやオス・メスの関係性はだいぶ違う。子育てへの参加の仕方は群れの成立(そもそもオラウータンのように群れを作らないサルもいる)の仕方によってによって変わってくる側面が強い。ただ、サルにとっての子育ては子供をかわいがる、自分の子供を愛するというものとは似ていても基本的に異なる。あくまで自分のオスとしての存在価値や群れを維持し、自分の子孫を残すためのシステムの一部だ。似ていても、やはり人間とは違う。ということは、いわゆる生物上の「男らしさ」と人間の男性に要求される「男らしさ」は離れていかないとならないのでは。