ピエール・ルメートル著、橘明美訳
 パリで起きた爆破事件。事件の直後に警察に出頭してきた青年ジャン・ガルニエは、爆弾はあと6つ仕掛けられていると告げ、逃走資金を要求する。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は取り調べにあたるが、ジャンが本当に金目当てなのか疑問を持つ。
 カミーユ警部3部作の番外編にあたる作品で、ボリュームもコンパクト。冒頭の描写はどこかユーモラスでもある。そのユーモラスさを切り裂くのが爆破事件と、犯人であるジャンの不可解さだ。爆破事件は非常に計画的でありつつ、爆発物に関しては素人というちぐはぐさが面白い。このちぐはぐさを理詰めで説明するのではなくほぼ放置しているあたりがカミーユ警部3部作に比べるとおおらかだが、逆にリアルでもあった。そして邦題から窺えるように、ここでもまた事件の背後には「母」がいる。ラストはあっけなく唐突でもあるのだが、犯人がなぜそうせざるを得なかった考えると痛ましい。ルメートルの作品は、密度はまちまちであれどの作品もこういった、何かの絆に絡め取られる痛ましさをはらんでいるように思う。

わが母なるロージー (文春文庫)
ピエール ルメートル
文藝春秋
2019-09-03





傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4)
ピエール・ルメートル
文藝春秋
2016-10-07