ソフィー・エナフ著、山本知子・川口明百美訳
 6か月の停職から復帰したアンヌ・カペスタン警視正は、親切された特別捜査班のリーダーに任命される。しかし集められたメンバーは売れっ子小説家との兼業警部、組んだ相手が次々と事故に合う悪運の持ち主、大酒呑み、生真面目な堅物、ギャンブル依存症ら、パリ警視庁の厄介者ばかりだった。カペスタンは彼らと共に、20男前と8年前に起きた2つの未解決殺人事件の捜査を始める。
 フランスの『特捜部Q』と評されているそうだが、確かに似ている。ただ、本作の方が軽快でコミカル。特捜班のリーダーであるカペスタンのへこたれなさや、何をやるにも自分流を貫きあっけらかんとしたロジエール、気難しく厳格だが実直なルブルトン、そして他人に不幸を運ぶと自認している故に気が優しいトレズ。キャラクターが立っていて楽しい。皆問題児扱いされるだけあって、色々と難がある人たちではある。しかし上手くはまれば高いパフォーマンスを発揮するし、難点こそが面白みにもなっている。それぞれの個性を活かしチームを機能させていくことは、カペスタンにとってはリーダーとしての腕の見せ所と言える。彼女の、基本的にチームのメンバーを信じる姿勢が、彼らの信頼を得ていくのだ。どのメンバーも魅力があるが、一見全く共通項がなさそうなオジエールとルブルトンのコンビネーションが、意外と上手くかみ合っていく様がよかった。仕事をするってこういう側面があるよなと。また、男女の間もあくまで同僚、仕事仲間であって色恋が絡まないところもいい。
 殺人事件自体はちょっと行き当たりばったりっぽくあまり精緻ではないのだが、捜査陣や事件を取り巻く人々の人間味に魅力がある。捜査本部の内装まで自分達でやる(というかほぼロジエールの趣味で・・・)という所もおかしい。改装していいのか!という驚きも。フランスでは普通なの?!