イギリス郊外の町に生まれた少年レジナルド・ドワイトは、音楽の才能に恵まれ音楽院でピアノを学び始める。やがてロックに傾倒するようになりミュージシャンを目指すことを決意、「エルトン・ジョン」(タロン・エジャトン)という芸名で音楽活動を始める。そして生涯の友となる作詞家のバーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)と出会い、成功への道をひた走っていく。監督はデクスター・フレッチャー。
世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの生涯を映画化した作品で、本人も製作総指揮に参加している。とはいえ、史実や実際の時系列に忠実であることよりも、ミュージカルとしての楽しさやビジュアルのインパクト、収まりの良さを重視しているのかなという印象。エルトンのことを良く知らなくても(私も良く知らないし)面白かった。本作、エルトンがリハビリ施設で語りだすシーンから始まる。あくまで一人称の、彼にとっての、彼が見せたいストーリーなんだよというアピールだと思う。
子供時代のエルトンは、父親に褒められたくて色々と関心をひこうとする。しかし父親は彼に冷淡で家にもいつかない。母親は父親ほどではないし気まぐれに彼を可愛がるが、やはりあまり関心はなさそう。彼に保護者としての愛情を注ぐのは祖母のみだ。やがて青年になったエルトンはバーニーと運命的な出会いを果たす。2人は意気投合し強い絆で結ばれる。名曲『Your Song』が生まれるエピソードは、本作のクライマックスの一つだ。とても美しいのだが、2人の関係のピークがもうきてしまったかという切なさもある。エルトンとバーニーの間には愛がある。が、ゲイであるエルトンの愛と、ヘテロであるバーニーの愛は意味合いが違う。更にエルトンはマネージャーのジョン・リード(リチャード・マッデン)と恋におちるが、リードはビジネス第一だった。
 エルトンを愛する人たちはいるが、彼と同じような意味合いの愛、同じような熱量の愛は手に入らない。バーニーはエルトンの音楽の最大の理解者であり、彼都の友愛があったからこそ名曲の数々が生まれたわけだが、彼はエルトンの元に留まってはくれない。要所要所で立ち去るシーンが挿入される。エルトンは悲しんだり怒ったりするが、最終的にはそれを受け入れる。本作、音楽はとても楽しいのだが、この孤独の解消されなさ、愛を得られない様はなかなか辛い。孤独である自分を受け入れ、それでも生き延び音楽を続けるという話なのだ。題名にもなった『ロケットマン』の歌詞がこれまた辛い。実際のエルトンがパートナーを得て元気に生きている(エンドロール前に紹介される)からなんとなく安心するけど、そうでなかったらかなり救いのない話なのでは。
 エルトンと父親の関係に問題があるのは非常にわかりやすい(再婚相手との子供に対する態度の違いがこれまた辛い)。とはいえ、母親も大分問題がある。エルトンが自分はゲイだと告白した後の言葉には、そりゃあ心が折れるよなと。それを言っちゃあお終いよという言葉が世の中にはあるが、さらっと言ってしまうのだ。
 一方、バーニーは一貫してエルトンへの友愛を持ち続けるいい人として描かれているが、折々のしんどい局面で流れる、しかもそのシチュエーションにものすごくハマる曲の歌詞、これ全部バーニーがエルトンが歌うこと前提で書いた(当然エルトンの自分に対する思いもわかったうえで)わけだ。エルトンもそれを要求したわけで、お互いそこまで要求できるというのはなかなか怖い関係性だと思う。ずっと喧嘩はしなかったというけど、本当かな・・・。