チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著、くぼたのぞみ訳
 ラゴスからアメリカに移民した若い女性は、毎晩何かが首のまわりに絡みつくような息苦しさを感じていた。ある日彼女は大学に通う白人青年と親しくなる。表題作を始め、兄がカルトのメンバーと間違えられ投獄された経緯を静かに綴る『セル・ワン』、夫に連れられナイジェリアからアメリカへ移り住んだ女性の夫への疑念を描く『イミテーション』等、文化、ジェンダー、家族の中にある溝とすれ違いを描いた短篇集。
「異文化」に対する理解のなさ、あるいは理解している風に見せかけることの無神経さが、「異文化」側から描かれる。異文化は、アフリカであったりアメリカであったりする。周囲が彼/彼女らの母国文化に対して無関心だったり理解がないのはまだましで、厄介なのは理解しているというパフォーマンスをするが、実際の所何もわかっていないという相手の時だろう。それは異国に対してだけではなく、男女の間であったり、家族のあり方に対してだったりする。自分の頭の中にある異国であったり異性であったりに対するイメージで括られ、そのイメージや役割を押し付けられることは不愉快であり、また苦しいことだ。『ジャンピング・モンキー・ヒル』はアフリカ出身作家の為のワークショップが舞台だが、アフリカ人ではない講師の言う「アフリカらしさ」とは何なのか(よしんば講師がアフリカ人だったとしても)お前が言うなよ!って話だろう。主人公が書こうとしていることは彼女にとって重要なことで「アフリカらしさ」はさしあたり前面に出る要素ではない。このギャップをユーモラスかつ辛辣に描いており面白かったし、主人公がある場面で怒れなかった、笑って流してしまったことを後で嫌悪するというくだりが身に染みる。ああここでもか・・・とげんなりする。こういう場面ではもう、怒っていいんだよね。彼女もそれに気づくのだ。
なにかが首のまわりに (河出文庫)
チママンダ・ンゴズィ アディーチェ
河出書房新社
2019-07-08





明日は遠すぎて
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
河出書房新社
2012-03-13