ダシール・ハメット著、田口俊樹訳
 ポイズンヴィルと呼ばれる町にやってきた、コンティネンタル探偵社の調査員である「私」。依頼者は地元の新聞社の編集長だが、到着するなり依頼人が殺されてしまう。ポイズンヴィルは鉱山会社の社長である依頼者の父親によって牛耳られていたが、社長が労働組合対策として呼び入れたギャングたちによって支配され、汚職まみれの町になってしまったという。社長から改めて町の浄化を依頼された「私」はギャングの抗争に足を踏み入れていく。
 旧訳で読んだときには、正直どういう話なのかぴんとこない所があったのだが、新訳は展開がよりスピーディに感じられた。スピーディであると同時に、「私」もギャングたちも妙に行動的に感じられる。そのくだり本当に必要?という部分もあるので、決してバランスのいい長編というわけではないのではないか。とは言え、プロット(全体的なプロットというよりも局地的な伏線の仕込み方がいいというか)も登場人物の造形もなかなか楽しかった。いわゆる「いい人」が「私」含めほぼ出てこない。悪人ではないけどちょっと嫌な奴とか性格に難ありな人ばかり。特に「私」も翻弄される女性の、とにかくお金が好きなの!姑息な取引やるけど文句ある!?的な堂々とした振る舞いがいい。

血の収穫【新訳版】 (創元推理文庫)
ダシール・ハメット
東京創元社
2019-05-31


血の収穫 (創元推理文庫 130-1)
ダシール・ハメット
東京創元社
1959-06-20