高村薫著
 12年前のクリスマス。早朝、東京郊外の野川公園で、元・中学校の美術教師である年配女性がスケッチ中に殺害された。犯人は特定できず、当時捜査責任者だった合田雄一郎は後悔を抱き続けていた。そして12年後、1人の女性が同棲相手に殺害された。その女性・朱美は、12年前に殺された元・美術教師の教え子で、事件への関与をほのめかすような言葉を残していた。
 合田が警官としての現役を退き、警察大学で教鞭をとっている(57歳だそうです・・・)ことに呆然とするというか感慨深さがあるというか・・・。読者にとってだけではなく、本作の登場人物全員にとって、時間の経過はひとつのテーマになっている。朱美と幼馴染だった真弓にしろ、同級生の浅井や小野にしろ、その親たちにしろ、事件当時は気付かなかったが時間がたつと見えてくるもの、気付きたくなかったが気付いてしまうものがぽろぽろと出てきて、そこがうっすらと怖い。その一方で、真弓と朱美の母親たちのように、年月を経たからこそ新たに関係を築いていけることもある。
 2つの殺人事件が中心にあるが、事件そのものではなくそれによって揺り動かされる人たちの群像劇としての側面が強い。とは言え、事件によって関係者の人生に生じた諸々は、事件がなくてもいずれは表面化したのではないかというものだ。事件の当事者は不在のまま、誰かの口から語られる彼女たちのままで、それが物悲しくもあるし本作の題名は皮肉なのでは。

我らが少女A
髙村 薫
毎日新聞出版
2019-07-20


冷血(上) (新潮文庫)
髙村 薫
新潮社
2018-10-27