パリでアパート管理の手伝いや公園の草木の剪定をしている24歳のダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)は、ピアノ教師レナと恋に落ちる。しかしある事件によりダヴィッドの姉は死に、レナも怪我を負いトラウマに苦しむ。更に姉の7歳になる娘アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)はシングルマザーだった母を亡くしひとりぼっちになってしまう。監督・脚本はミカエル・アース。
 試写会で鑑賞。アマンダ役のミュルトリエが本当に素晴らしい。自然体の子供として、作られ過ぎない可愛さがある。母親の死によるショックにずっと耐えている彼女が、ある場面で泣く。このタイミングをストーリー中のどこにもってくるかという演出が、わかってる!と思うと同時にちょっとあざといなとも思うのだが、アマンダの泣き顔の説得力に納得させられる。自分の中で色々な思いの収まりがついた時に、ようやく真に泣ける、感情を表に出せるのだろう。
 本作で泣くのは子供だけではない。唯一親密な親族だった姉を亡くし、自分の将来もおぼつかないまま子供の人生を背負うことになったダヴィッドは、友人の前で泣きだしてしまう。姉が死んだ出来事が事故や病気とはだいぶ様相が違い、それだけでもショックなのに、アマンダに対しての責任までのしかかってくる。更に事件で傷ついた恋人に十分に寄り添うこともできない。彼は彼で、この先が不安でしかたないのだ。このシーン、泣くことをとがめられない、男なら泣くな、大人なんだからしっかりしろ的なことを言われない所がいい。
 「~らしく」「~なんだからこうでないと」みたいな概念が全般的に薄かったように思う。ダヴィッドはアマンダと生活し面倒をみるが、彼女の父親として振る舞おうとしているわけではなく、「保護者である大人」になっていくのだ。アマンダの母親もあまり「母親らしい」振る舞いではなく、デートで浮かれたり仕事でひと悶着あったりする。母親として以外の顔もちゃんと見せるのだ。母親がいる、のではなく、こういう個人がいる、という視点で描かれていたと思う。ダヴィッドたちの実母も、いわゆる世間が言うところの母親らしい人ではなかった。それでも「そういう人」として描いており善し悪しのジャッジはされていなかった。子供の描写に気をひかれがちだが、大人たちの描写もとてもよかったと思う。


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