フェルディナント・フォン・シーラッハ著、酒寄進一訳
 参審員として裁判で被告人の供述を聞いた女性は、その内容に強く反応してしまう(『参審員』)。アルコール依存症の弁護士は夫を射殺した疑いをかけられた女性の弁護を引き受けるが、弁護の突破口となったのは意外な人物からのアドバイスだった(『逆さ』)。裁判と罪と刑罰にまつわる短編集。
 シーラッハはやはり短編の方がいい。短ければ短いほど切れがいいと言ってしまってもいいくらいだと思う。毎回、深淵を覗きこむものはまた深淵から覗きこまれているのだ・・・等とつぶやきたくなる、人間の不条理さ不可解さが突如顔を出してくるような作品ばかり。心に積み重なっていく淀みのようなものが域値を越えた時、本人でも予想しなかったような行動が現れる。周囲から見たらいきなりトチ狂ったように見えるんだろうけど、当人の中では経緯があっての発露なのだ。その経緯を他人が納得するように説明することができない、しても理解されないから辛いし救われないんだけど。
 最初に収録されている『参審員』が特に胸に刺さったのだが、何もこの場、このタイミングで直面しなくても!という間の悪さが、1人の人間の人生を決定付けてしまったやりきれなさが辛い。せめてカタリーナの共感が「彼女」に伝わっていれば願わざるを得ない。痛切な作品がある一方で、『逆さ』や『小男』のようなちょっとユーモラスな作品もある。今回は、司法のシステムや法律の隙間に落ち込んでしまったというか、本来ならやるべきだったことを司法が行えないというような、システムの穴みたいな話が多かったように思う。


刑罰
フェルディナント・フォン・シーラッハ
東京創元社
2019-06-12






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ライアン・ゴズリング
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2014-02-05