ロバート・ベイリー著、吉野弘人訳
 トム・マクマートリーは、元フットボールの全米王者で、弁護士として活躍した後、母校アラバマ大学で法学教授に就任していた。しかし学生との暴力沙汰、恋愛沙汰の汚名を着せられ退任を余儀なくされる。妻は既に亡くなり、更に自身も癌に冒されていることが発覚。生きる気力を無くしていたところ、昔の恋人から相談を受ける。娘一家をトレーラーとの交通事故で亡くしたが事故の真相が知りたいというのだ。元教え子の若手弁護士リックに橋渡しをするが、事故の裏には企業の陰謀が潜んでいた。
 利益ばかりを追及する企業にすりつぶされた人たちの無念を晴らす為、まだ若くて先走り気味なリックが奔走する様は、危なっかしいが清々しい。トムとリックの間にはある因縁があるのだが、わだかまりが溶けるの早すぎない?という気が・・・。真実と正義を求めて若者と老人が奔走する様は清々しいし、悪者は潔く悪者だし、追い詰められて腹をくくり逆襲する人たちの行動にカタルシスはあるのだが、なんとなくもやもやが残る。このもやもや、主にトムの序盤での振る舞いによるものだ。自分の講義で学生たちの姿勢を試すのだが、そのやり方がちょっとモラハラっぽい。不真面目な学生に注意するのは当然のことだろうが、相手の人格を貶めるようなやり方に思えた。また教え子の女性に対する対応も、教員として大分脇が甘いのでは。スキャンダルをでっち上げられるのは気の毒だけど、距離を詰めすぎな面はあったと思うんだよね・・・。師事したコーチに対するトムの尊敬や忠実さも、トムに対するかつての教え子たちの死簿や団結心も、ちらっと見える程度なのだが、マッチョ感漂い若干気持ち悪い。アメリカ南部のノリってこういう感じなんだろうか・・・。何より、法廷での闘いは正義や人権の為である以上に、トムにとってはゲームとしての側面が強いのではないかと思わずにいられなかった。敵とやりあうのが本当に好きな人なんだなと。


ザ・プロフェッサー (小学館文庫)
ロバート ベイリー
小学館
2019-03-06





もう年はとれない (創元推理文庫)

ダニエル・フリードマン
東京創元社
2014-08-21