有栖川有栖著
 小さな孤島に招待された7人の男女。島のホテルで出迎えたのは使用人の夫婦のみで、主は姿を見せない。残されたボイスメッセージは、悪人たちを裁くためにこの島に集めたと告げる。そして第一の殺人が起きた。アガサ・クリスティの代表作へのオマージュかつ王道の本格ミステリである表題作の他、ファンタジーにホラー、日常の謎系ミステリにショートショート等、幅広いノンシリーズ短編集。
 見本市的なバリエーションがあって、気軽に楽しめた。こういうのも書く人なんだ、という意外さも。とは言え、やはり表題作が一番すわりがいい。著者の文章のお作法は、本格ミステリを書くことに最適化されているのではないかと思う。状況説明するのに適した文体なんだろうなー。とは言え、自分でも意外だったのだが、一番ツボにはまったのはパロディファンタジー「線路の国のアリス」。題名の通り、鉄道の国に迷い込んだアリスの物語だが、スイッチバックがちゃんとスイッチバック文になってるー!とかループがちゃんとループ文になってるー!(何のことだかわからないだろうが、本文を見ると一目瞭然なのです)という喜びがあった。著者の鉄道ファンとしての面が色濃く、どころではなくあからさまに出ていて微笑ましい。線路の国での不思議な現象と鉄道ネタがちゃんと一体になっている。