アレン・エスケンス著、務台夏子訳
 大学生のジョーは、課題として身近な年長者の伝記を書くことになる。介護施設で紹介されたカールは、30数年前に少女暴行殺人事件で有罪となり、末期がんで余命わずかな為に仮釈放されたと言う。カールはインタビューに応じるが、ジョーは彼に下された有罪判決に疑問を持ち始める。
 カールは本当に犯人なのか、彼の過去に何があったのか、そして彼がなぜ裁判の後口を閉ざし、今話す気になったのか。更にジョーはなぜ課題の一環という枠を越えて事件を追い続けてしまうのか。ジョーやカールだけでなく、登場する人々それぞれの過去が現在を追いかけ続けているような構造。過去からの逃げられなさが切ない。ジョーは自分が過去に犯したと感じているある罪の償いの為に、掻き立てられ続けているように見える。その焦りが時に軽はずみな行動をとらせ、危なっかしい。頭は悪くないし意外と腕っ節も強い(バーの用心棒経験があり見た目より動ける)のに、肝心な所で思考がフリーズしているみたいだ。彼は家庭環境にも問題があって、大学進学したものの家族が足かせになり続ける。愛情故に家族を断ちきれない所がまた切ないし痛ましい。それはあなたのせいではないんだよ、とジョーにも彼の隣人ライラにも言ってあげたくなる。なお邦題は原題とはだいぶ違うのだが、翻訳がいい仕事していると思う。

償いの雪が降る (創元推理文庫)
アレン・エスケンス
東京創元社
2018-12-20





さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)
バリー・ライガ
東京創元社
2015-05-10