私立探偵のチャールズ(マックス・アイアンズ)の元をかつての恋人ソフィア(ステファニー・マティーニ)が訪ねてくる。大富豪である祖父のアリスティド・レオニデスが死んだ、毒殺の可能性があるので調べて欲しいというのだ。レオニデスの屋敷には彼の前妻の姉であるイーディス(グレン・クローズ)、ソフィアの両親である長男夫婦とソフィアの弟妹、会社を継いだ二男夫婦、そして若い後妻が暮らしていた。全員に殺害の動機と機会があるのだ。原作はアガサ・クリスティの同名小説。監督はジル・パケ=レネール。
 くせ者一族が住むお屋敷での殺人、という本格ミステリの大定番な設定だが、個々の登場人物のキャラクターにクセがありすぎて、かなり作りものっぽい。それを逆手に取って、お屋敷の室内の作りや撮り方、登場人物の衣装等、ちょっと舞台演劇的な作りもの感の強い方向へ、すこしだけずらしているように思った。演劇の舞台のような場で作りものっぽい登場人物たちが、お互いに作りものっぽい外面を見せているような構造だ。外部から来た探偵であるチャールズもまた、隠された姿を持っているという所も面白い。全員が信用できないのだ。
 とは言え、ミステリとしては意外と平坦な印象を受けた。脚本のせいなのか原作がこういう感じなのかわからない(原作を昔読んだはずなのだが全く記憶にない・・・本作の犯人も最後までわからなかった)が、犯人の絞り込み要素がなかなか出てこない。いわゆるフェアな本格という感じではないのだ。むしろ、一族の「ねじれた」人間模様と感情のもつれにスポットがあてられており、かなりメロドラマ感がある。家長の支配欲が招いた悲劇だという面が浮き彫りになっていく。長男と二男が父親からの承認をめぐって憎み合う様はこっけいでもあり悲哀にも満ちている。
 なお、衣装がどれも良かった。おしゃれというよりも、その人がどういう人なのかわかりやすい衣装、かつディティールが凝っていると思う。イーディスが襟元につけていた大ぶりのシルバーのブローチが素敵。あと、車がいい!イギリスの時代もの映画・ドラマは当時の車がちゃんと出てくるのがいいなぁ。


ねじれた家 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー
早川書房
2004-06-14





アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵 [DVD]
カトリーヌ・フロ
ハピネット・ピクチャーズ
2007-04-25