1953年、スタン・ローレル(スティーヴ・クーガン)とオリバー・ハーディ’(ジョン・C・ライリー)のコメディアンコンビ、ローレル&ハーディは、イギリスツアーに乗り出す。かつて一世を風靡した2人だったが今では過去の人扱い。しかし地道な宣伝活動が実を結び、動員は着実に伸びていく。励まし合いツアーを続ける2人だが、口論により関係にひびが入ってしまう。監督はジョン・S・ベアード。
 これみよがしな盛り上げ方はせず、割と淡々とした語り口だなと思っていたら、ここぞというところでぐっと心を掴む。あざといのではなく、そこに至るまでの人物造形やコミュニケーションの経緯の積み重ねでエモーショナルさが生まれており、堅実な良さがあった。脚本は『あなたを抱きしめる日まで』のジェフ・ポープで、やりすぎない上品さがある。98分というコンパクトさもうれしい。
 ローレルとハーディは仲違いするが、2人が信頼し合っているからこそ腹が立つのだろう。お互い愛とか期待とかがなかったらそもそも腹も立たない。2人は元々、プロダクションの指示でコンビを組まされたので、最初からうまがあったとか共通項が多かったというわけではないだろう。実際、やせ形で几帳面、少々気難しいローレルと、大柄で酒・女・博打好きだが人好きのするハーディは見た目も性格も対称的。仕事の同僚でなかったら仲良くなったかどうか微妙だ。それでも2人は仕事のパートナーとしては抜群の組み合わせで、深く理解し合っている。これはもう友情に他ならないだろう。倒れたハーディを喧嘩中だったローレルが見舞うシーンは、妙に可愛らしい。こういうことをやれる間柄なんだよな、心を許しているんだよなということがすごくよくわかるのだ。
 友情があるのはローレルとハーディの間だけではない。彼らの妻たちもツアーに合流するのだが、2人はこれまた対称的。考え方も振る舞いも真逆で、一緒に行動はしているが決して仲が良く友好的というわけではない。しかし1人が非常に苦しい思いをしている時、もう一人がぎゅっと彼女の手を握るのだ。芸人の妻という似た立場だからこそ理解しあえることがある。彼女らの間にもまた、同士としての友情があるのだ。

あなたを抱きしめる日まで [DVD]
ジュディ・デンチ
Happinet(SB)(D)