父親を亡くした少女チャーリー(ヘイリー・スタインフェルド)は父が残した自動車の修理に明け暮れ、既に立ち直ったかのように見える母や弟との関係はぎくしゃくしている。18歳の誕生日、彼女は廃車置き場でボロボロの自動車を見つけた。自分の車を持てたと喜ぶチャーリーだが、その自動車は突然、人型に変身。彼は他の星から来た生命体だったのだ。チャーリーは彼をバンブルビーと名付け匿うが、バンブルビーには追手がかかっていた。監督はトラビス・ナイト。
 マイケル・ベイ監督の超大作、トランスフォーマーシリーズからのスピンオフ。しかしシリーズ内で最も出来の良い作品がスピンオフだとは・・・!冒頭のサイバトロン星パートは、全トランスフォーマーファンが「こういうのが見たかったんだよぉぉ!」とむせび泣こうかというもので、次回はこの部分で2時間見せて下さい!とリクエストしたくなる。またトランスフォーマーといえば文字通り変形シーンが醍醐味なわけだが、体の構成パーツがどう動いて変形しているのかちゃんとイメージ出来る構造と見せ方、かつ変形途中のフォームで移動できるというところも見せてくれる。これだよ!これが見たかった!ベイは今まで何していたんだよ本当に!個人的にはバンブルビーが初代ビートルモデルなところが嬉しい。私にとってのバンブルビーはビートルなので、カマロも悪くないんだけど(本作内の設定だとカマロがデフォルトみたいなんですが)やっぱり違和感あるんだよな・・・。また、オプティマスが旧モデルなのもうれしい。やはりコンボイ指令はこのフォルム、このカラーリングだよな!
 ドラマとしては非常にオーソドックスで、むしろ地味と言っていいくらい。チャーリーが父親の死と折り合いをつけていく成長物語が縦糸、バンブルビーとの友情と共闘が横糸という感じだ。チャーリーは父親のことを深く愛しているが、彼女の母や弟の父親への愛が浅かったというわけではない。チャーリーはもちろんそれを理解しているし、母親のボーイフレンドが(ちょっとピントはずれているが)いい人だということもわかっているのだろう。それでも、人によって悲しみの速度みたいなものが違い、そこで食い違いが出てくる。母親のボーイフレンドがチャーリーのことをちゃんと心配している、保護者になる覚悟があるという描写を入れている所はとてもよかったし、ティーン向け映画として真っ当だと思う。チャーリーとバンブルビーが共に成長し、それぞれがいるべき所を確かめる物語は爽やか。
 本作がトランスフォーマー映画で一番まともだなと思ったのは、物語が展開される地理的な距離感、時間経過の感覚。ベイ監督作品て無駄にやたらと移動するし、作中時間の経過がよくわからないと思う。本作は高校生が車やバイクで移動できる範囲内、かつ数日間の出来事であることがはっきり設定されている。ドラマ作りをする上ではごくごく普通のことなんだけど・・・。





トランスフォーマー超神マスターフォース DVD-SET1
冬馬由美
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2015-01-28