鵜林伸也著
 カリスマ的なギタリスト、クスミを擁するバンド「赤い青」。そのライブステージでボーカルのヨースケが死んだ。死因は千枚通しによる刺殺。ライブ中、暗闇の中での犯行は部外者には難しく、犯人はバンドメンバーかライブハウスの関係者ではと考えられた。ライブハウスのスタッフである私は、事件の真相を探り始める。
 一応本格ミステリというくくりで、事件のトリック(というよりも「そうなってしまった」状況の解説)は理屈が通ったもの。エレベーターの使い方はなるほどなというツボの押さえ方だったし、取って付けたようではあるが名探偵も一応登場する。とは言え本作、バンドを描いた小説、ロックって何なんだという音楽関係者の葛藤を描く小説としての側面の方が心に響いた。バンドを続けること、ロックを続けることの喜びと困難。青春小説ぽいほろ苦さがある。もはや大きなムーブメントではなく、小さな熱狂が点在しているような今のロックの状況と重ねると何か切なくなるよ・・・。しかしロックは死なない、転がり続けるのだ。実在のミュージシャンやバンドの名前が頻発しており、そこが嬉しくもあり、物語の内容を考えるとちょっと切なくもあり。私が好きなミュージシャン、ロックンローラーの皆様には、新作リリースしなくてもいいし私が好きなタイプの音楽をやらなくなってももういいので、元気で楽しく生きていてほしい。長生きしてね。


全ロック史
西崎 憲
人文書院
2019-02-21