ジョン・ディクスン・カー著、三角和代訳
 雨上がりのテニスコートで名家の青年の絞殺死体が発見された。遺体はコートの中央付近で仰向けに倒れているが、そこへ続く足跡は被害者のものと、遺体の発見者であり青年の婚約者であるブレンダのもののみ。彼女は無実を訴え、ブレンダに思いを寄せるヒューは、彼女を守りたい一心でアリバイ工作をしてしまう。しかし彼女が無実だとすると、殺人はどのように行われたのか?
 カーといえばオカルト感という先入観があったが本作はオカルト感一切なく、予想外の軽妙さ。若者たちの三角関係というベタなロマンス要素もあって楽しく読んだ。こいつは嫌らしいキャラですよ、という造形がなかなかうまく、嫌さの種類に実感がある。すごくモテるし愛されるタイプであるが故の嫌さの造形がいい。そして真犯人がとにかく下衆い!ヒューとブレンダの工作が状況の予想外の変化によりどんどん裏目に出ていくというくだりはコメディぽくも読めるし、展開が結構早くリズミカル。これは新訳の良さかもしれない。トリックは一応ちゃんと物理的な説明がついているのだが、トリックそのものよりその状況にもっていく口実に笑ってしまった・・・それはさすがに無理が・・・。なお解説によるとカー本人も認めている通り、小説の構成がひとくだり余分になっているところは勿体ない。無理に長くしようとしてしまったそうだ。

テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫)
ジョン・ディクスン・カー
東京創元社
2014-07-20


三つの棺〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン・ディクスン・カー
早川書房
2014-07-10