1995年、ロサンゼルスのビデオショップに落ちてきた女性ヴァース(ブリー・ラーソン)。彼女はクリー帝国の惑星ハラから来た特殊部隊スターフォースの一員で、宿敵スクラルを追ってきたが、司令官ヨン・ロッグ(ジュード・ロウ)とはぐれてしまったのだ。驚異的な力を持つ彼女は、身に覚えのない記憶のフラッシュバックに悩まされていた。スクラルは彼女の記憶の中にある何かを狙っているらしい。謎を解明するため、ヴァースとSHIELDの捜査官ジャック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)は行動を共にする。監督はアンナ・ボーデン&ライアン・フレック。
 ようやくこういう女性ヒーローが登場したか、と感慨深いものがあった。すごく美しいわけでもセクシーなわけでも(もちろんブリー・ラーソン自身は見られる職業の人としての美しさがあるが、強調されていない)、愛嬌ふりまくわけでもない、加えて恋愛もしない、ただ単に「ヒーロー」。女性という要素の扱いがとてもフラットだ。強い女性ヒーローというと、今までは強いけど優雅だとか、女傑的な美しさとか、あるいは母性をベースにしたものだったりしたが、キャプテン・マーベルにはそういう要素は薄い。ただただ強いのだ。闘い方も結構乱暴で優雅とは程遠い。殴る!投げる!捻じ曲げる!って感じだ。ヴァース=キャロルが無駄に笑わない所も良かった。笑うのは、笑いたい時、笑いあいたい相手に対してだけでいい。
 ヴァース=キャロルの、自分の記憶は一体何を意味するのか?自分は本当は何者なのか?という「なぜ?」に突き動かされて邁進していく様が小気味よい。そして彼女が「なぜ?」と思っていたのは自分のことだけではなく、自分を取り巻くものに対してもだった。何かに阻まれるたびに「なぜ阻むのか?」「阻むことに正当な理由はあるのか?」と問い続け諦めなかったからこそ、今の彼女がある。彼女の記憶が彼女を肯定し支え続ける。決して師匠の導きのみによってここにたどり着いたわけではないのだ。最後に「手を取らない」というのも清々しい。「導いてやろう」系の奴は大体ろくでもないからな!
 フューリーとの関係にしろ、マリア(ラシャーナ・リンチ)との関係にしろ、友情の描き方がとてもいいなと思った。ピンチの時は呼んで、絶対助けに来るからという言葉、もうヒーローとしか言えない!そしてマリアとの絆と思いやりには胸が熱くなった。どちらもべたついていない、しかし深い信頼がある。