ジョーダン・ハーパー著、鈴木恵訳
 11歳の少女ポリーは母親と継父と暮らしていた。ある日学校から帰ろうとすると、刑務所帰りの実父ネイトが現れ車に乗せられた。ネイトは獄中で凶悪なギャング組織を敵に回し、彼だけでなくポリーと母にも処刑命令が出ていたのだ。母親は既に殺されており、ネイトとポリーは逃亡の旅に出る。
 ポリーはネイトと暮らしたことが殆どなく、ネイトも処刑命令が出るまではポリーと会うつもりもなかった。ほぼゼロ状態から始まる親子関係だが、共に危機を乗り越えることにより徐々に絆が育ち始める。とは言えその絆は、生き延びる為とは言え銃と暴力を下地にしたものではあるのだが。ネイトがポリーに護身術を教え鍛えるエピソードは微笑ましいといえば微笑ましいのだが、その中でポリー自身の中にある暴力への指向が開花する瞬間がある。ネイトがポリーを暴力から遠ざけようとしても、ポリーは自ら暴力に近づいていってしまう。ネイトへの愛情や仲間意識によるものだけではないその行動が危うい。 バイオレンスな旅路がリズミカルで軽快、時にユーモラスな文体で描かれる。湿っぽくなりそうな所をあくまで乾いたタッチに留めている所がいい。ネイトがどういう方法で娘を守ろうとするのか、最後まで目が離せなかった。

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)
ジョーダン・ハーパー
早川書房
2019-01-10


逃亡のガルヴェストン (ハヤカワ・ミステリ)
ニック・ピゾラット
早川書房
2011-05-09