緊急通報指令室のオペレーター、アスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)は今まさに誘拐されているという女性イーベン(イェシカ・ディナウエ)から通報を受ける。車の発信音や物音、イーベンの声等から、彼女が置かれている状況に少しずつ近付きなんとか救出しようとするアスガーだが。監督はグスタフ・モーラー。第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞した作品。
 ここ数年でワンシチェーションスリラーのバラエティが増えたなという印象があったが、本作はその中でも頭一つ抜けて出来がよく、ストイックに「ワンシチュエーション」に徹していると思う。電話からの声と音だけで構成され、アスガーはオペレーター室から出ることがない。この縛りの中でよくここまでサスペンスを盛り上げたな!と唸った。90分足らず(88分)という短い作品ではあるが、全く飽きず最後まで観客を引っ張る。
 このシチュエーションの中で盛り上げる為のストーリー構成がよく考えられている。(ネタバレになるので妙な言い方になるが)まず彼女に何があったのか?という1周目の盛り上がりがあり、更にベクトルの向きが変わった2周目の盛り上がりがあるのだ。2周目の存在は何となく予想できるのだが、そこでクールダウンさせないのはアスガーと電話相手との会話の組み立て、タイミング設置が的確だからだろう。アスガーとイーベン、アスガーと所轄(という呼び方はデンマークではしないとは思うけど・・・)、アスガーと元相棒刑事という組み合わせでの言葉のやりとりが、何が起きているのかを徐々にあぶりだしていく。
 更に、事件の経緯と平行して、アスガーがなぜ緊急通報指令室に配属されたのか、彼が迎える「明日」とは何なのか、過去に何があったのかが徐々にわかってくる。アスガーの行動、相棒に対する態度等がちょっと独善的に思えたのだが、おそらくはそういう資質が招いたことへとつながってくる。これらの謎が明らかになった後、題名の意味が重く響いてくる。キレのいいサスペンスだが、ある事実が判明した後の雰囲気や後味は北欧ミステリっぽさがある。アメリカのミステリとは一味違った闇の濃さだ。

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