現代文学の巨匠と称されるジョゼフ・キャッスルマン(ジョナサン・プライス)がノーベル文学賞を受賞することになった。妻ジョーン(グレン・クローズ)は共に喜び、息子のデビッド(マックス・アイアンズ)を伴い授賞式が行われるストックホルムへ赴く。しかしライターのナサニエル(クリスチャン・スレイター)がジョゼフの作品はジョーンの手によるものではないかと疑問をぶつけてくる。監督はビョルン・ルンゲ。
 クローズは本作で第91回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされているが、それも納得。微笑だけでいくつもの感情、シチュエーションを感じ取らせる名演技だったと思う。人懐こいがちょいちょいクソ野郎感を醸し出すプライスの演技も的確。ストーリーやビジュアルはそんなに凝ったものではないので、俳優の演技を見る映画としてのウェイトが高いのは否めない。とは言え、やはりクローズの力で面白く仕上がっている。スレーターを映画で見るのも久しぶりなので嬉しかった。本作のナサニエルような、饒舌さが鼻につくがどこかチャーミングな役が似合う。
 冒頭、ベッドでのくだりで、ジョゼフはちょっと(いや大分、だろうか)無神経なのでは?と気になった。隣で寝ている人がいるのにわざわざベッドで夜食食べる?その後ジョーンとセックスする流れも、冗談交じりとは言え自分の欲求優先で(ジョーンの睡眠欲はどうなる)いい気がしない。、見ていくうちにその気になり度合いがどんどん高まっていく。彼は基本的に好人物でジョーンのことを愛しているのはわかる。ただ、ジョーン(に限らず家族や他の人が)何を考えているのか、自分の言動が何を意味することになるのかに無頓着で、それが無神経さに感じられるのだ。言葉を扱う職業なのに、相手にかける言葉の選び方は軽率だ。特に息子に対してはもうちょっと言いようがあると思うのに・・・。
 対してジョーンは常にそつなく感じが良い。正に「内助の功」的妻として振舞う。が、それが彼女の本意というわけではないこともそこかしこで感じられる。女性は結婚すると〇〇の妻、〇〇の母という呼ばれ方になってしまう。黙っているからと言ってそれらに納得しているというわけではないのだ。ジョゼフの言動はジョーンのその納得していなさを全く理解していないものだと思う。ジョーンが重要な話をしようとするたびに何かしらの出来事が起き話の腰を折られるのだが、この夫婦はずっと、こういう感じでやり過ごしてきたんじゃないかと思った。
 ジョーンとジョセフが何をやったのかはあっさりと明かされてしまうので、ドラマとしては少々物足りない。しかし、最期にジョーンが見せる微笑みは、最大のイベントはこれから、本作で語られたことの後に起こるんだろうなと思わせるものだ。

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