ジョージ・エリオット著、廣野由美子訳
  イングランド中部の商業都市ミドルマーチ。知的で美しい、二十歳そこそこのドロシア・ブルックは、信仰心厚く、自分の人生を大きな目的に捧げようという情熱に燃えていた。ハンサムで資産のあるチェッタム卿の求婚を退け、彼女は27歳も年上のカソーボン牧師との結婚を選ぶ。研究者であるカソーボンへの尊敬を覚え、彼への献身を決意したのだ。周囲の人々はこの結婚に賛成しきれずにいた。
 イギリス小説の最高峰と評される『ミドルマーチ』の第一巻。光文社古典新訳文庫から出たのを機に読み始めたのだが、中流階級の人々の生活が生き生きと描かれており、大変面白い。人の行動にしろ内面にしろ、また世情やお金の話にしろ、諸々がすごく具体的だ。群像劇でもあるが、個人の内面が手に取ってわかるような描き方。ドロシアの情熱が段々裏切られていく様、カソーボンとの擦れ違いはさもありなんなのだが、彼女が生きていたのがこの時代(ヴィクトリア朝)でなければもっと違った生き方があったのにと惜しくなってしまう。ドロシアは知性豊かだし勉強意欲もあるのだが、当時の女性にとって勉強して良しとされる分野はごく限られていた。限られた世界の中の知識で判断しやりくりするしかないというのは歯がゆい。現代の視点から読んでいるから歯がゆく感じられるのだが、当時の女性の中にも、鬱憤が溜まっている人はいたのではないかなと思う。
 また群像劇としては、街の重要人物たちのパワーゲームが少々脂っこく滑稽。ザ・村社会!どんな文化圏でも人が集まれば政治が生まれるというわけか。嫉妬や駆け引きはあるが、どこか長閑でもある。さほど規模が大きくない都市、地方都市的なスケールの話だというのも一因か。

ミドルマーチ1 (光文社古典翻訳文庫)
ジョージ エリオット
光文社
2019-01-08


ミドルマーチ〈1〉 (講談社文芸文庫)
ジョージ エリオット
講談社
1998-08