日明恩著
 港区芝浦のマンション前で、重ねられた自動車タイヤの中に立たされた焼死体が発見された。更に西新宿、幡ヶ谷でも同様の死体が発見され、猟奇的な手口は世間の注目を集める。警視庁刑事総務課刑事企画第一係の潮崎警視はお目付け役の宇佐美、田上と共に捜査に参加する。一方、新宿署の留置所勤務になった武本は、深夜の歌舞伎町で酔って喧嘩になり拘留された男・柏木のことがひっかかっていた。
 シリーズ4作目だが、もしかすると今までの潮崎・武本シリーズの中で一番刑事ドラマっぽいかもしれない。今回主に捜査を行う(といっても周囲の目を盗んでグレーすれすれのものだが)のは潮崎。本人の風変りなパーソナリティと派手な背景ばかりが注目されるが、実は地道な捜査に耐える堅実さや目配りの確かさ(これが育ちのいいということなんだろうなと・・・)が十二分に発揮されている。今回は正に潮崎ターンと言ってもいいだろう。また、彼のお目付け役、しかし意外と潮崎以上に暴走しそうな傾向も見せる宇佐美がとてもいいキャラクターだった。彼の独自の合理性や正直さは、警察という保守的な組織とは明らかに相性が悪い。有能なので排除はされないが煙たがられる、それを恐れないハートの強さと我の強さ。潮崎とは別の方向性で手ごわいのだが、妙な所で素直で可愛くなってしまう。まだ警察という組織に染まりきっていない正木の「普通」さが2人のアクを中和しており、とてもいいトリオだった。
 事件の背後にあるものが誰かの悪意や欲望というわけではない(そういったものがないわけではないが、大元は違う)、運不運としか言いようがないものだ。そういうものによって個人の人生が取り返しのつかないものになってしまうということがやりきれない。世界の理不尽さに対する犯人の慟哭に対し同情しつつも、警官として真っすぐ対峙する潮崎らの姿が眩しい。

 
ゆえに、警官は見護る
日明 恩
双葉社
2018-11-21




やがて、警官は微睡る (双葉文庫)

日明 恩
双葉社
2016-02-10