アッティカ・ロック著、高山真由美訳
 テキサス州の田舎町。沼地で黒人男性弁護士の死体が発見された。次いでカフェの裏手で地元の白人女性の死体が発見される。停職処分中の黒人テキサス・レンジャー、ダレンはFBIの友人に頼まれ、探りを入れる為に現地へ向かうが。
 テキサスという土地の風土、文化が色濃く表れている。人種差別のきつい(KKK的な組織が現役で活躍中)地域であることが事件の見え方にも大きく影響しているのだ。一時代前の話かと思ったらばっちり現代の話でショックというかげんなりするというか・・・。都会育ちの被害者の妻が、現地の微妙な空気感や一触即発な状況にぴんときていないというのも無理はない。こういう土地で黒人として生まれ育つというのがどういうことなのか、外側からは黒人同士でも実感できない部分があるのだ。そういう意味では、本作はある土地に生まれつき、そこから離れられない人たちの業のようなもので出来ているようにも思った。ダレンと妻の間の溝、また被害者であるマイケルとその妻ランディの間の溝は、この故郷に対する思い入れへのギャップからも生まれている。
 男女の惹かれあう様、すれ違う様が、(解説でも言及されているように)何度も反復・呼応していく構成の妙があった。最初はストーリーの進め方がちょっとかったるく、ダレンの行動を見る限りではあまりレンジャー向きな人ではないのでは?と思ったのだが、だんだんそのかったるさというか、事件の芯が見えているようでなかなか近付けない所が本作の肝なのだとわかってくる。起こったこと自体は単純なのだが、主に風土に根差すフィルターでややこしく見えてしまうのだ。ダレンがレンジャー向きとは思えないのにレンジャーとして生きていくというのも、風土の中で培われた価値観に動かされた面が少なからずあると思う。それだけに、最後の1章はあまりに皮肉だ。


黒き水のうねり (ハヤカワ・ミステリ文庫)
アッティカ・ロック
早川書房
2011-02-28