南イタリアの港町ナポリ。地元のマフィアのボス・ヴェンチェンツォ(カルロ・ブチロッソ)の葬儀が執り行われていた。しかしこの葬儀にはある秘密があった。数日前、看護師のファティマ(セレーナ・ロッシ)はある事件の目撃者になってしまう。マフィア配下の殺し屋チーロ(ジャンパオロ・モレッリ)は事件の目撃者暗殺を命じられるが、ファティマは彼の幼馴染で元恋人だった。チーロはファティマを守る為に殺し屋コンビの相棒ロザリオ(ライツ)を裏切り、彼女を連れて逃げる。しかし組織は2人を追い続ける。監督はアントニオ・マネッティ&マルコ・マネッティ。
 近年歌って踊る映画といえばインド映画だが、私はイタリア発の本作の方が断然好きだ。序盤、棺の中の死体が歌い始める時点で、えっそういう方向性なの?!とショックを受けたのだが、妙に楽しい。以降要所要所で歌と踊りが展開されるが、全てがプロのクオリティというわけではなく、どこか素人くさい。この素人くささはあえてのものなのだろうが、微妙な野暮ったさと選曲の歌謡曲感が見事にマッチし味わい深すぎる。キッチュと言えばキッチュなのだが、映画のクオリティが低いというのではなく、むしろ完成度は高い。よくこの形態でやろうと思ったな・・・。魅力を伝えるのが難しいのだが、ミュージカル、ノワール、ロマンス、ガンアクションという諸々のジャンル要素が盛り合わされており、かつそれぞれの要素はベタ中のベタな部分を使っているのだが、全体としてのトーンは統一されている。謎の化学変化だ。
 ヴィンチェンツォの妻マリア(クラウディア・ジェリーニ)が映画好きという設定で、映画ネタが結構多いところも楽しい。ストーリーの肝になるある作戦自体、映画からアイディアをとったものだし、最初に出てくる観光名所は「『ゴモラ』の撮影場所だよ!」と紹介される。『ゴモラ』をわざわざ引き合いに出してくるという映画愛。
 マリアは損得勘定がはっきりしており、そこそこえげつない性格ではあるのだが、若いメイドをいびるベテランメイドは許さない(自分がメイド出身だから)という主義で、金目当ての結婚と揶揄される夫のこともそれなりに愛している。部下に無茶ぶりはするが何だか憎めない。アストンマーチンとデロリアンとどっちがいい?と聞いてくる人のことをあまり嫌いにはなれないな・・・。他の登場人物についても同様だ。チーロとの絶対的信頼関係があると思いきや途中で切ない片思い状態になってしまうロザリオも、彼なりに筋は通っているし、自分はリーダーポジションじゃないんだよね・・・と切々と歌うヴィンチェンツォの右腕的部下も憎めない。本作の魅力は、この憎めなさと言うか、可愛げにあるように思った。

恋するシャンソン [DVD]
ザビーヌ・アゼマ
パイオニアLDC
2000-07-26





ゴモラ [DVD]
チロ・ペトローネ
紀伊國屋書店
2012-05-26