ぽっちゃり体型に劣等感があり、自分に自信が持てないレネー(エイミー・シューマー)は、有名化粧品会社に勤めているものの希望のポストに応募を出せずにいた。ある日ジムでトレーニング中にマシンから落ちて気を失ってしまう。目覚めた時に鏡に映っていたのは絶世の美女になった自分だった。監督はマーク・シルヴァースタイン&アビー・コーン。
 レネーは「美女」に変身したと思いこむわけだが、彼女が見ている自分の姿は一度も出てこないと言う所が、あくまでレネーの主観の問題なんですよと主張している。ルックスに自信を持ったことで堂々と振る舞うレネーの姿は爽快なのだが、これは彼女の中のルッキズムが非常に根強い、美人でゴージャスであれば諸々の問題が解決する、得をすると思いこんでいるということでもあるから、見ているうちにちょっと辛くなってきた。レネーの中の「美人」像が大分古く、なまじ「美人」の自意識を得たことで、その古さや鼻持ちならなさが増徴してしまうのだ。ここを笑いに落として皮肉るなりなんなりしてくれればよかったのだが、あんまり言及しないので気になった。レネーは、男性はセクシー美女を見たらナンパするし、性的なちょっかいをかけられれば悪い気はしないだろうと思いこんでいる。実際は人それぞれのはず。男性は皆セクシーな女性が好きでセックスの話をしたいだろう、下ネタで盛り上がれる美女こそいい女だという思いこみは多分に迷惑だし、そこに巻き込まれる女友達のこともバカにしている。そうでない話をしたい男女ももちろん(相当数)いるわけだから。
 「美人」として奔放に振る舞うことでボーイフレンドもできるが、彼が「美人」版レネーに惹かれたのは彼女のルックスによるものではなく、気後れせずに自分が楽しみたいことを楽しむ彼女の振る舞いによるものだ。「美人」になったレネーはそこを見落としてしまう。バーの美人コンテストでのレネーが爽快なのは、彼女が自分がやりたいようにやっていてとても楽しそうに見える、そのことで周囲が盛り上がるからで、必ずしも彼女が美女だからではないのだ。クライマックスのスピーチは取ってつけたようでしらける。彼女が発言している場にいる人たちは美男美女のセレブばっかりで、なぜセカンドラインのお披露目にこの人たちを呼んだのか謎だし、彼女の声は届くべきところに届いていないのでは?と気になってしまう。そもそも社内にスタイル抜群の美女しかいないんだから、変えるべきなのはレネー個人の意識よりも先に社風なんでは・・・。
 どちらかというと、レネーよりも彼女の上司のエイブリー(ミシェル・ウィリアムズ)や、ジムで知りあう女性のように、ルックスも背景も申し分ないように見えるのに自己肯定感の低い人の方が問題解決が深刻なんじゃないかなという気がした。特にエイブリーがなんだか気の毒でしょうがなかった。彼女は「バカっぽい」声にコンプレックスがある(高目の可愛らしい声はアメリカではバカっぽくて評価されないそうだ。日本の女性アニメキャラ全滅だな・・・)。会議でも部下たちが創業者である祖母の顔色ばかり気にするし、なんとなく下に見られている感じ。彼女が「私は私」と思えたとしても、周囲がそう見なさそう。

そんな彼なら捨てちゃえば? [Blu-ray]
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2010-07-14





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