1992年、ロサンゼルス・サウスセントラル。ミリー(ハル・ベリー)は色々な事情で家族と暮らせない子供たちを預かり育てる、里親をしていた。怒りっぽい隣人のオビー(ダニエル・クレイグ)は子供たちの騒々しさに文句をつけつつも、子供たちが困っていると捨て置けずにいる。ある日、黒人少女が万引き犯と間違われ射殺された事件、拘束された黒人男性が警官から集団暴行を受けた事件で、不当判決が下される。裁判の行方を見守ってきた市民たちが暴動を起こし、その怒りはあっという間に広がっていく。ミリーと子供たちもそのうねりに巻き込まれていく。監督はデニズ・ガムゼ・エルギュベン。
 ロサンゼルス暴動を背景としているが、暴動そのものというよりも、たまたまその時期、その場所に居合わせてしまったロスの住民たちの姿を描く。ミリーにしろ“長男”的なジェシー(ラマー・ジョンソン)にしろ、裁判の行方をTVニュースや中継で追い続けるくらいには関心を持っているし、裁判の結果に「ありえない!」と憤慨する。ただ積極的に暴動に参加しようとはしない。当時、ミリーと似たようなスタンスだった人も大勢いただろう。ジェシーも本来暴動に関わったり面白がったりするような性格ではないが、友人や思いを寄せる少女の手前、何となく行動を共にしてしまい、ある悲劇に直面する。暴動がいい・悪いという問題ではなく、その中ではこういうことが起きやすくなるしそれはどうにも出来ないのだろうという所がやるせない。ジェシーは法律が不当なことを正すはずと考えており、それは至ってまともなことなのだが、そのまともさが通用しない世界であることを目の当たりにせざるを得ないということが、また辛いのだ。彼がこの先世界を信頼できるのかどうか、とても心配になる。
 ミリーとオビーは一見共通項がなさそうだが、ある出来事で2人の心がすごく近づいて見える所がいい。シリアスな状況なのにどこかコミカルな味わいがある。2人を近付けるきっかけも、その後の進展も子供たちの存在によるものだ。オビーは大抵何かしら怒ったり怒鳴ったりしているのだが、子供への対応が意外とちゃんとしている。外に子供がいたら保護して何か食べさせようとするし、一緒に踊るし、暴力描写のある映像は見せないように配慮する。子供はケアしなければならない、という意識がミリーと共通しているのだ。弱いものを無視できない所が垣間見え、ミリーが惹かれていくのも何となくわかる。ダニエル・クレイグと子供たちとのコントラストがまた意外と良い。
 また、子供がきっかけになるものの、子供との関係とはまた別の部分でミリーにとってのオビーの存在が大きくなるというのも良かった。母親としての面と恋に浮き立つ面との両方があり、どちらかがどちらかを圧迫するものではないのだ。

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