西加奈子著
 小学校3年生の「こっこ」こと琴子は、三つ子の姉、両親、祖父母という大家族。家族は優しく理解があり、学校の同級生たちとも仲良くやっている。しかしこっこは不満だ。彼女が憧れているのは孤独と理解“されなさ”。こっこは自由帳に発見や思いつきを書き綴っていく。
 西加奈子って小説上手かったんだな!初めて分かった気がする(笑)!小学3年生の子供の視点と言葉の操り方が非常に上手い。こっこには世界はどのように見えているのか、更にその見え方を俯瞰するような視点も平行して維持する。こっこの同級生の朴くんは在日韓国人で、ぽっさんは吃音がある。彼女にとって、それは「かっこいい」部分なのだが、当人にしてみたらいじられたら嫌な部分かもしれない。自分の価値観と相手の価値観や気持ちの相違が、こっこにはまだぴんとこないのだ。聡明なぽっさんが彼女をたしなめつつ彼女の良さは認めている所が微笑ましい。ぽっさんとの話し合いや、ぽっさんの尊敬を得ているこっこの祖父らとのやり取りの中で、こっこは自分の言葉を獲得していく。
 大阪弁による台詞の数々は何となく『じゃりん子チエ』(はるき悦巳)あたりを思い出すが、同級生の多種多様なカラフルさは現代的。また、三つ子の姉らのあっけらかんとした自由さも魅力があった。

円卓 (文春文庫)
西 加奈子
文藝春秋
2013-10-10