日本・スウェーデン外交関係樹立150周年「シュウェーデン映画への招待」にて鑑賞。ストックホルムの病院に入院中だった警部が、騎兵銃の銃剣でめった刺しにされ殺されるという事件が起きた。主任警視マルティン・ベック(カール=グスタヴ・リンドステット)率いるストックホルム警察殺人課の刑事たちは捜査を開始する。被害者には悪評があり、不適切な捜査や行動に対する訴状が幾通も出てきた。ベックたちは怨恨による犯行とみて捜査を続けるが。原作はマイ・シューヴァル&パール・ヴァールーの人気警察小説シリーズ7作目『唾棄すべき男』。監督・脚本はボー・ヴィーデルベリ。1976年の作品。
 70年代の雰囲気が濃厚で、ざらついた渋い刑事ドラマ。前半は地道な捜査が続くのだが、後半で急に派手な見せ場が出てくるし、クライマックスでは群衆にヘリコプターや消防車まで動員した一大ロケが見られる。刑事もの好きにはお勧めしたい。ベックにしろその部下たちにしろ、いわゆる二枚目ではないが、皆味のあるいい顔つきで個性豊か。“キャラ”として完成された個性豊かさではなく、こういう人いそうだなという、人間の雑味が感じられる造形だ。
 ベックが最初「つまらない奴」と称する刑事が、確かに地味だが地道な書類チェックを厭わず着眼点も鋭い(が、それをことさら言い立てない)優秀さを垣間見せる、その優秀さをベックもわかっているというあたりがいい。また、色男風(美形ではないがモテそう)がいたり、一匹狼風なとんがった奴がいたりと、群像劇的な良さがある。ベックが決して愉快な人物というわけではないあたりもいい。妻とは家庭内別居っぽい(ベックは居間のソファーで寝ている)し、ハンサムでもスタイルがいいわけでもない。しかし存在感がある。演じるリンドステットは元々コメディ俳優だそうだが、本作では非常に真面目な演技を見せておりはまり役ではないかと思う。
 シリアスで時間との勝負という要素も出てくるサスペンス展開なのだが、ちょこちょこユーモラスな部分もある。これが狙ったユーモラスさなのか、思わぬところでそうなってしまったのかよくわからない所も面白い。終盤のベックの状況は大変深刻なんだけど、その扱われ方がどこか吹き出してしまいそうなもの。また、対象監視中におばあちゃんがやたらと話しかけてきてお茶やらクッキー(北欧土産でよく見かけるやつだった・・・やっぱり定番なのか)やら出してくるのとかは、明らかに狙っていると思うが。

刑事マルティン・ベック 笑う警官 (角川文庫)
マイ・シューヴァル
角川書店
2013-09-25


刑事マルティン・べック [DVD]
カルル・グスタフ・リンドステット
オルスタックソフト販売
2011-04-28