C(ケイシー・アフレック)は妻M(ルーニー・マーラ)を残して事故死してしまう。幽霊となったCは2人で住んでいた家に留まり、Mを見つめ続ける。しかしMには新しい恋人が出来、やがて家を去っていく。Cはずっと家に留まり続ける。監督はデヴィッド・ライリー。
 英米の“奇妙な味わい”とでも称されそうな短編小説みたいな作品だった。後半は、パーティーでの男の話が前フリになっているわけなのだが、ちょっとSFとホラーのドッキングみたいな味わいもある。こぢんまりした作品なのだが無駄がなくてよかった。序盤の方で、なぜこういう撮り方になっているのかな?と不思議に思う(この時点では必然性がない)シーンが続いていたのだが、後々になってちゃんと理由があることが分かるという、伏線の敷き方。伏線が巧みというよりも、必要なものだけでできている(ので伏線は伏線としてちゃんと機能する)という感じ。
 CはMへの愛情ないしは妄執の為にこの世に留まり続けるのだが、Mに対して何か出来る、彼女を守れるというわけでは全くない。彼に出来るのはその場で見ていることだけだ。時にはポルターガイストを起こしたりもするのだが、必ずしも自分でコントロールできるわけではないみたいだし、それによって何かを変えられるわけでもない。死者は無力なのだ。おそらく、徐々に生きていた時の自我も記憶もなくしていくのではないか。忘れられ、自身でもそのあり方を忘れていく彼らの存在は、恐いというよりも、寂しく切ない。
 幽霊たちの寂しさ、切なさは、彼らが生きている人間の時間の流れから取り残されていくことにあるだろう。幽霊となったCにとって時間という概念が希薄になっていく様を、反復と省略堵で簡潔に見せていくやり方が上手い。Mにとって数年が経年していても、Cにとっては昨日今日のよう。だんだんギャップが開いていくのだ。MはCとの生活を過去のものとして新しい生活を始めていくが、Cには納得できず、時にポルターガイストを起こしたりする。とは言え、Mは彼のことを忘れたのではなく思い出さない時間が増えただけなのではないか。記憶が浮かび上がってくると心は乱れ、それがCの乱れとも共鳴するようだった。死者と生者の記憶と時間のあり方が如実に現れており、何ともやるせない。
 あまりにもベタな“ゴースト”の外見なので、これを直球でやるのは結構勇気がいるのではないかと思う。ジョークっぽくならないよう、シーツのドレープの美しさや目の穴のニュアンス等、かなり考え抜かれた造形になっている。哀愁漂うというところがポイント。

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2013-01-23