躁鬱病の影響で過眠症になり引きこもり状態、当然無職の寧子(趣里)は、ゴシップ雑誌の編集者をしている恋人・津奈木(菅田将暉)と同棲している。ある日、寧子の前に津奈木の元恋人の安堂(仲里依紗)が現れる。津奈木とよりを戻したいから自立して部屋を出ろというのだ。安堂は無理矢理寧子のバイト先を決め、寧子はそのカフェバーで働くことになってしまう。原作は本谷有希子の同名小説。監督は背木光才。
 寧子は津奈木に、私と別れられるあなたが羨ましい、私は私と別れられないと吐露する。自分と付き合い続けることがあまりにもしんどいという痛切なシーンで心に刺さった。本作、この自分であることの苦しさがずっと描かれている。寧子の他人に対する振る舞いは感じが良いとは言えないし、津奈木に対して言葉をぶつける様は八つ当たりのようにも見える。彼女は自分自身と付き合うのに手いっぱいで、周囲に対して気力体力を振り分けることができないのだと思う。感じよく振舞う、相手に配慮することに多大な気力体力を使わざるを得ない人もいるのだ。自分もわりとそうなので、寧子が疲労していく様は他人事とは思えないし、そんな状態で接客業なんてやったらダメ~!とハラハラしてしまった。感じよく振舞いたいという意欲はあるんだけど、頭と体がついていかないんだよね・・・。
 寧子は津奈木に、自分が言葉と感情をぶつけたら受け流さずに返してほしいと訴える。自分と同熱量、同じ本気度で対峙してほしいのだ。気持ちはわかるが、常にそれを求めるのは酷だよなぁ・・・。寧子は自分と相手との感じ方のギャップに敏感で、自分の気持ちが伝わっていないとわかるとすごく傷つく。バイト先の店長たちとのちぐはぐさも、こういうことってよくあると思うのだが、見ていて辛かった。コミュニケーションの理想が高いというか、ある意味相手を過大評価しているんだろう。そんなに全力で生きられないよ・・・。作中、彼女に対して一番本気でぶつかっていたのは安堂かもしれない。すごく迷惑な本気度ではあるけど、安堂はやりとりを流さないんだよね。