人里離れた場所で、妻マンディ(アンドレア・ライズボロー)と暮らすレッド(ニコラス・ケイジ)。しかしマンディがカルト集団に連れ去られ、レッドの目の前で惨殺されてしまう。怒りに燃えるレッドは復讐の為に武器を手に取り、カルト集団の後を追う。監督はパノス・コスマトス。
 一昔前のカルト映画を自分たちの手で再現したい!あの時見たあれをやりたいんだよ!という並々ならぬ情熱を感じた。私はいわゆるカルト作品にはあまり興味がないので、本作を十分楽しめたとは言い難い。しかし、よくわからないながらも何かすごい熱量と愛が込められた作品だということはわかるし、その一点で嫌いになれない。具体的に80年代、90年代の特定作品の雰囲気を再現したいというよりも、監督の中で見た「はず」になっている映画のイデアみたいなものを再現しようとしているんじゃないかなと思った。
 映像のエフェクト、撮影方法だけでなく、レッドの自宅の内装も「あの頃」感が強烈。特に洗面所の壁紙は、よりによってこれを選ぶんだー!というもの。ありそうで実際にはないんじゃないかなという絶妙な選択。この壁紙だけで全部許せる気がしてきたもんな・・・。この洗面所のシーン、ニコラス・ケイジの熱演もあって名シーンだったと思う。
 レッドは復讐の為に突き進むが、ケイジの目力と顔芸が強烈すぎて、場内でちょいちょい笑いが起こっていた。しかし、レッドの怒りと悲しみが痛切なこともわかるので、笑うに笑えない気分にもなる。レッドのセリフは殆どないのだが、とてもエモーショナル。前半、レッドとマンディのどうということのないやりとりや2人で過ごす様子の、自然さや気負いのなさがとてもいいのだ。この人たちはお互い信頼しあっているし、いいパートナーなんだということがわかる。一見奇矯な本作だが、こういう部分をちゃんと作っているので単なる色物にならないのだろう。マンディが弱弱しくやられていく女性、アイコン的な女性ではなく、確固とした人格付けされた登場人物なのもよかった。

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