インドの小さな村で機械工をしているラクシュミ(アクシャイ・クマール)は愛する妻の為、安価な生理用ナプキンを手作りしようと思い立つ。インドではまだ生理用品は高価で、多くの女性はボロ布等で対処しており、感染症を起こす人も多かったのだ。研究とリサーチを重ねるラクシュミだが、生理を穢れと見なす伝統的な社会の中では彼の行動は奇行と見なされ、とうとう村を追われてしまう。それでもナプキン作りを続ける彼の前に都会育ちの女性パリーが現れ、彼に協力すると言う。監督はR・バールキ。
 実話を元にした映画だが、2001年の設定の話だということに驚いた。この時点でナプキンの普及率が12%だという。また、舞台が田舎だからということもあるだろうが、生理中の女性を穢れたものとして扱う風習が根強く、かなり退いてしまった。室内に入れないし、仕事にも学校にも行けない。ラクシュミとしては妻といつも一緒にいたいのだが、母に怒られてしまう。
 こういう環境の中でのラクシュミの行動は、周囲からはかなり奇妙に見えたろうし、積極的に生理用品に関わろうとするのは不浄・不吉と非難される。それをあんまり気にしていないように見える所が面白い。彼は無宗教というわけではないが、合理的で迷信を気にしない。また機械にしろ何にしろ、どういう仕組みになっているかよく観察し自分で再現してみるDIY精神が旺盛。こういう人だから臆せず取り組めた、同時に周囲から変人扱いされたんだなと納得できるエピソードで前半は占められている。全体の構成はやや散漫で緩急に乏しい印象を受けたが、ラクシュミの人となりはよくわかるのだ。
 ラクシュミが生理用ナプキン開発に乗り出すのは、妻が感染症を起こしては大変だという個人的な事情からで、最初はインドの女性たち全体のこととしては考えていなかっただろう。しかし妻と引き裂かれた後、他人の為になることをしたい、世の中をよくしたいという気持ちで動き続ける。彼が世界を広げていくというのが後半のストーリー。国連の会議に招かれて披露する英語のスピーチは、決して流暢ではないが感動的。
 インドの多くの女性は生理期間中は学校に行けないし仕事も出来ない。学ぶ/働く機会が失われてしまうし、継続的に学ぶ/働くことが難しくなる。ラクシュミは最初女性が置かれている環境がどういうものか、さほど考えていなかったと思う。しかしナプキン製造をすることは女性と関わり、彼女らの意見を聞くことであり、更に販売も女性がやった方が顧客の抵抗が少ないのだと知っていく。ナプキン作りが女性の快適さや自由さを広げると同時に、雇用も広げていくのだ。彼の善意と情熱が広がっていく様が気分いい。

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