インテリアデザイン会社に就職した川奈つぐみ(杉咲花)は、取引先との飲み会で高校時代の先輩で初恋相手の鮎川樹(岩田剛典)と再会する。建築士として働く樹は、交通事故で脊髄損傷し、車椅子で生活するようになっていた。つぐみは樹と仕事をするうちに再び彼への想いが強まり、側で支えたいと思う様になる。樹もまっすぐなつぐみに惹かれていくが、自分は彼女の重荷にしかならないのではと悩む。監督は芝山健次。
 杉咲も岩田も悪くはないのだが、杉咲のルックスがかなり幼い(正直、オフィスカジュアルよりも高校の制服の方が様になっていた)ので、2ショットがどうかすると犯罪っぽく見えてしまう・・・。誰のせいでもないが、見ていてちょっときまり悪くて困った。子供っぽかった女の子が段々とタフさを見せていくという意外性みたいなものがでていればいいのだが、つぐみの成長は描いているものの、そこまでには至らなかったように思う。
 基本的にいい人、まともな人しか出てこないので、不快感はない。2人の障害となる人物としてつぐみの両親(特に父親)が挙げられるだろうが、父親は自分が理不尽なことを言っているという自覚はあるし、その上で娘には少しでもハードルの低い人生を送ってほしいという切実さは伝わるので、不快ということはなかったし、悪者にもしていない。樹の母親が「誰かに迷惑をかけても子供には幸せになってほしい」と吐露する言葉と対になって、親の視点として提示されているのは良かった。
 状況、心情の殆どをつぐみのセリフとモノローグで説明してくれる親切設計で、それ言わないとだめ?と思う所は多々ある。決して流暢な作りの映画というわけではないのだが、真面目に作っており、車椅子で生活することについてきちんとリサーチをしているのはよくわかる。
 車椅子で生活する人の動作、具体的にどういう困難さがあるのかという部分、また周囲からどんなことを言われがちなのか、それについて当人はどう感じるのか、ちゃんと見せようとしていると思う。また、当人の親や恋人等親しい人たちの心情や、障害によって関係がどのように変わりうるのかという所も言及しており、見せ方が一方通行にならないような配慮が見られた。母親に「実家に帰ってきた方がいいんじゃない?」「仕事は地元でもできるでしょ」と言われるのは、親心故とわかっていても結構きついんじゃないかなと思わされた。
 つぐみが最後に口にする「夢の中の先輩は~」というセリフ、樹が前に口にした自分の夢の話と対になっているが、2人が「そういうもの」として自分たちのあり方を受け入れたことがわかり、ちょっといいと思う。


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加藤晴彦
バップ
2003-06-25