喫茶店フニクリフニクラには、不思議な噂があった。ある席に座ると望んだ時間に戻れるというのだ。その不思議な現象は、店員の時田数(有村架純)がいれたコーヒーにより起こる。しかしいくつかのルールがあり、それを守らないと元の時間に戻れないのだ。店には様々な事情を抱えた人たちが訪れる。原作は川口俊和の同名小説。監督は塚原あや子。
116分の作品だが、構成は映画よりも連続ドラマ向き。連作短編集的な構造で、30分×4回くらいの気軽に見られるTVドラマだとちょうどいい感じの話だった。個々の客の事情を順番にフォーカスしつつ、数が長年抱えるわだかまりにフォーカスしていくという構成なのだが、映画としては長すぎでメリハリに欠ける。ビジュアルもTVドラマっぽく平坦な印象で映画としては安っぽい(特に店内セットがテーマパーク内の飲食店みたい)。また結構いい役者が出ているのになぜか全員普段より下手に見え、よっぽど製作期間が短かったのかと思ってしまう。TVドラマとして見たら、多分そんなに悪い印象にならないので、メディアを間違ったなぁとしか・・・。
特に気になったのは、導入部分の不恰好さだ。タイムスリップの「ルール」については本編中でも説明されるので、冒頭でわざわざ字幕にする必要はなかったのでは。また1つ目のエピソードが、それ過去に戻らないと言えないこと?って感じ(作中でも突っ込まれるくらいだし)でちょっと嫌になってしまった。タイムスリップする客を演じた波瑠が丸損した感じなっちゃっている。ただ、ドラマは徐々に持ち直す。特に松重豊と薬師丸ひろ子が演じるエピソードは時間が積み重なることの豊かさと残酷さ両方を見せており悪くない。