金貸しをしていた夫婦が殺され、東京地検刑事部の検事・最上(木村拓哉)と新人検事の沖野(二宮和也)が事件を手掛けることになった。既に時効となった少女殺人事件の容疑者だった松倉(酒向芳)に疑いがかかるが決め手がない。沖のは徐々に、最上が松倉を真犯人に仕立てようとしているのではと疑い始める。原作は雫井脩介の同名小説。監督は原田眞人。
 映画のビジュアルや演出も、役者の演技も妙にくどい。二宮はしばしば見せる句点の置き方が不思議なせりふ回しが強化されており、木村はやたらと演技がかっている。最上に協力する闇ブローカー諏訪部(松重豊)は立ち居振る舞いが漫画みたいなデフォルメ度だし、容疑者・松倉は色々と奇矯すぎる。前景にいる登場人物はくっきりすぎるほど濃く、くどく、背景の登場人物は色が薄くナチュラルという描き分けがされているように思った。あえてのくどさなのだろうが、少々上滑りしているように思った。最上の新人研修教官としての立ち居振る舞いや、友人と同じ誕生日の有名人の名前を挙げていくシーンは、やり過ぎ感極まって、見ていて笑いそうになる。まあそのくどさも本作の持ち味だろう。
 本作、前半は割と普通のミステリ映画だと思うのだが、後半、最上が独自に動き始めるにつれて、どんどん奇妙なねじれを見せていく。後半の最上の行動は穴だらけでミステリ要素はどんどん薄まる。更に、最上の祖父は太平洋戦争中のインパール作戦の生き残りで、諏訪部はその手記に興味を持っている設定なのだが、このインパール作戦の記憶が他の部分とそぐわず浮いている。おそらく原作にはなかった要素だと思う。最上の親友・丹野(平岳大)が巻き込まれたスキャンダルの背後にあるもの、そして最上自身もその最中にいる組織、システムの病巣と根を同じくするものとして取り入れられているのだろうが、無理矢理感が強い。監督の熱意はわかるが、この作品でそれをやる必要があったのかは疑問。そしてラストショットがダサすぎて震えた。叫ぶやつ、もうやめませんか・・・。

検察側の罪人 上 (文春文庫)
雫井 脩介
文藝春秋
2017-02-10


検察側の証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー
早川書房
2004-05-14