スティーブン・キング著、土屋晃訳
 1973年の夏休み。大学生の「ぼく」はガールフレンドとの距離を縮められないことに悩みながらも、遊園地「ジョイランド」でアルバイトを始めた。頼れる先輩や友人もでき、多忙ながらも楽しく充実した毎日だったが、下宿の女将から聞いた過去の殺人事件の話が気にかかっていた。4年前、遊園地内の幽霊屋敷で喉を裂かれて殺された女の子がいたという。友人に頼んで調べた所、似たような事件がいくつも起きていたことがわかる。
 キング作品には苦手意識があったのだが、本作は面白かった!ホラー要素が薄く(幽霊は出てくるが人を怖がらせる為ではない)どちらかというとミステリ小説としての側面の方が強い。犯人特定への道筋も一応理論的なもの(とは言えミステリとしては大味で、なぜそれまでだれも気付かなかった?!って気はするのだが・・・)。何よりジョイランドの情景や仕事内容の描写が生き生きとしており、青春物語としての瑞々しさがある。遊園地の支配人や占い師、下宿の女将など、サブキャラクターの造形がしっかりとしているのも魅力だった。ただ、「ぼく」が初恋相手のガールフレンドとの関係をずっと引きずっているのには辟易とした。「ぼく」は彼女とセックスできないことに焦れ、彼女の心が離れていくことに深く傷つく。でも彼女の方からしたら、「ぼく」は大分鬱陶しいのでは・・・。そして得られなかったセックスに対する埋め合わせみたいな展開が後半にあるが、それもちょっとなー。ちょっと夢見させすぎではないですかと・・・。

ジョイランド (文春文庫)
スティーヴン キング
文藝春秋
2016-07-08


女と男の観覧車 [Blu-ray]
ケイト・ウィンスレット
バップ
2018-12-19