トゥルゲーネフ著、沼野恭子訳
 16歳の少年ウラジーミルは、別荘の隣に住む21歳の公爵令嬢ジナイーダに一目惚れする。ジナイーダはいつもとりまきの男性たちに囲まれており、ウラジーミルは翻弄され思いは強まっていった。しかしある日、彼女が恋に落ちたと気付く。
 先日読んだウィリアム・トレヴァー『ふたつの人生』収録「ツルゲーネフを読む声」(光文社古典新訳文庫のみトゥルゲーネフ表記)の中に本作(とその他のトゥルゲーネフ作品)からの引用が多々あったので、気になって読んでしまった。昔は他愛ない話という印象だったが、新訳で読むと少年の恋にのぼせ上った舞い上がり方、鋭敏さと視野の狭さがいっしょくたになっている様が瑞々しく微笑ましい。また、ジナイーダにしろ彼女のとりまきにしろ、まだ半分子供であるウラジーミルの前では、大人として振舞おうとする。本当は彼女らもいっぱいいっぱいで、必ずしも世慣れているというわけでもないのだが、せめて彼の前では大人としての思いやりを発揮しようとしていたことが、今読むとわかる。その思いやりと、ウラジーミルはそれと気づかないのだが。

初恋 (光文社古典新訳文庫)
トゥルゲーネフ
光文社
2006-09-07


猟人日記 上 (岩波文庫 赤 608-1)
ツルゲーネフ
岩波書店
1958-05-06