スタートレックが大好きなウェンディ(ダコタ・ファニング)はスタートレックの脚本コンテストが開催されることを知り、大作を書き上げる。しかし郵送では間に合わないと気付き、パラマウント・ピクチャーズまで自分で届けることを決意。しかし自閉症を抱えている彼女は、生活の範囲はごく限られており一人で遠出をしたことなどなかった。はたして数百キロ離れたハリウッドに辿りつけるのか。監督はベン・リューイン。
 邦題はダサいが(原題は『Please Stand By』)良作。リューイン監督は『セッションズ』(2013)が「人と違う(故に大多数の中では不自由である)」ということに対して誠実な向き合い方をしていると感じさせる作品だったのだが、本作も同様。冒頭、ウェンディの毎日の生活を通し、彼女が何に対して困難を抱えており、それをクリアするためにどういう工夫が(本人からもケアする人からも)なされているのかをさらっと見せている。説明的になりすぎないがわかりやすく、見せ方が上手い。ウェンディのケアをしている施設の職員スコッティ(トニ・コレット)の振る舞いがとてもいい。適度な愛情がありつつプロとして一線を守っている感じ。
 ウェンディは何も出来ないというわけではなく、ルーティンがはっきりと決まっていれば仕事だって出来る。ただ、1人で遠出をしたことはないから長距離バスの乗り方や切符の買い方はわからないし、額面通りに受け取るコミュニケーションの癖は危なっかしくてハラハラする。リアルに考えるとかなり怖いシーンがあると思う。
 ウェンディは他人の感情に疎いし感情表現に乏しいが、感情がないわけではない。スター・トレックの登場人物の1人スポックと同様に、感情を理解しようとしている。彼女も他人と、ことに家族とコミュニケーションを取りたいし、側にいたいのだ。そういう感情や愛、そしてなぜ自分はそれを上手く表せないのか、本当はどのように伝えたいのかということも含め、彼女は脚本という形で表現する。彼女にとってスター・トレックは自分を代弁し補完するもの、自分の一部なのだ。人間がなぜ物語を愛するのか、物語が人をどのように支え、変え得るのかとてもよく伝わる作品。

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