フレドリック・バックマン著、坂本あおい訳
 7歳の少女エルサは大好きなおばあちゃんを亡くす。おばあちゃんは、変わり者で学校でも浮いているエルザの絶対的な味方だった。エルザはおばあちゃんの遺言に従い、様々な人に手紙を配達する。手紙の内容はおばあちゃんからの謝罪だった。
 もうすぐ8歳になるエルサは頭がよく好奇心旺盛だが、その好奇心と様々な疑問への自制がきかず、拘りが強い、大人から見たらやっかいな子、同級生から見たら「ウザい」子と言えるだろう。そんな彼女にとって、彼女同様やっかいな人であったおばあちゃんはヒーローだった。そのヒーローを失ったことでエルサは傷つく。更に、おばあちゃんのヒーローではない顔、自分のおばあちゃんではない顔を手紙を届ける過程で垣間見ていくことで、複雑な気持ちになり怒りさえ覚える。大好きな人の見たことがない、おそらく本人が見せたくなかった面や好ましくない面を見るのは大人でもちょっと気が重いから、子供だとなおさらだろう。エルサは年齢のわりには大人だが、こういった人間の複雑さを呑みこめるほどには大人ではないのだ。おばあちゃんがエルサにファンタジー物語を語るが、それが何を意味していたのかわかっていく過程は、少々苦くもある。それでも、エルサはおばあちゃん(以外の人たちも)はこういう風に語らざるを得なかったし、そういう生き方をせざるをえない人だったと納得していくのだ。そもそもおばあちゃんの物語が誰の為だったかということが明らかになると、この人たちの不器用さとままならなさがやるせない。起こってしまったことはやりなおせないが、エルサの奮闘により補修は出来たのかなと思えるのだ。


おばあちゃんのごめんねリスト
フレドリック バックマン
早川書房
2018-03-20


幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫NV)
フレドリック バックマン
早川書房
2016-10-21