1953年、粛清により国を支配していたソ連の独裁者スターリンが急死。次期最高権力者の座を狙い、側近だった政治委員フルシチョフ(スティーブ・ブシェミ)や副首相ベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)らは熾烈な争いを繰り広げる。監督はアーマンド・イヌアッチ。
 ソ連が舞台なのだが、全編英語作品。まさかブシェーミがフルシチョフを演じるとは・・・。本作、製作はイギリス。スターリンが英語で話し始めた時点でカクっと力が抜ける。映画ではよくあることだから別にいいのだが、妙にコントっぽい。しかしこのコントっぽさが本作の持ち味だろう。スターリンにしろその側近たちにしろばんばん粛清して国民を殺しまくっていたわけだし、本作中でも相当数の人が死ぬという大変深刻な状況なのだが、悲壮感がない。惨劇もいきすぎるとギャグに見えてくるという薄黒い笑いがある。
 独裁者がマイルールで国をがんじがらめにする、基本的なルールがめちゃくちゃになっているという現実がそもそもコントみたいな状況だから、それを更にコント化している感じだ。序盤のスターリンと側近たちのやりとりのノリは、ボス的先輩のいる体育会系部活の悪ノリっぽい感じもして実にバカバカしい。その腹の(物理的な)ぶつけ合いは何なんだよ!また、会議で忖度に忖度を重ねるので、最早会議ではない。空気の読みあいである。どこかの国でもよく見る光景、でもこういうやり方で国の行く末決められちゃたまらんよな!
 権力争いは激化し誰が誰をけり落としていくのか?という展開(と言っても映画見ている側は歴史として知っているわけだが)で、彼ら、少なくともフルシチョフとベリヤはスターリンが死んでラッキーと思っている。そんな中でも、スターリンの遺志や彼の思想は正しいという主張がちょくちょく出てくるあたりが面白い。一応同志は同志なのか。

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レオニード・モズゴヴォイ
紀伊國屋書店
2011-12-22