バイオリニストとして行き詰っていたシモン・ダウド(カド・メラッド)は、パリ19区の小学校に講師として赴任する。音楽に触れる機会の少ない子供たちに対する音楽教育プログラムで、バイオリン演奏を教え、最終的にはオーケストラで演奏するというものだ。子供が苦手なダウドはうんざりするが、アーノルド(アルフレッド・ルネリー)という少年に音楽の才能を見出す。監督はラシド・ハミ。
 音楽が中心にある映画ではあるのだが、いわゆる音楽映画とはちょっと違うかなと思った。作中の演奏シーンがほぼ子供たちの練習姿で「音楽未満」という感じという面もある(クライマックスはさすがに違うが)のだが、どちらかというと教育、学校教育とはどういうものかが描かれた作品に感じられた。子供たちが音楽を学んでいく過程であると同時に、ダウドが教育者として成長していく過程の物語なのだ。
 シモンはオーケストラ・クラスの子供たちの収拾のつかなさにイラつき、すぐに騒ぐ子供ややる気のない子供は受講をやめればいい、その方が演奏は上手くなると言う。それに対して担任教師は、そういう(問題行動のある子)にこそこの授業を受けさせたい、誰も排除しないと言う。音楽の専門教育の場であればダウドのいうやり方でいいのかもしれないが(そもそもやる気と才能による選別ありきの世界だから)、学校教育はそうではない。子供を取りこぼさないことが大事なのだ。
 とりこぼさない、見捨てないという姿勢を大人=教育者側が一貫して取り続けるのはなかなかしんどいが、苦境で見捨てられる(と感じる)と子供にとっては後々まで心の傷になるもんな・・・。だから、保護者も巻き込んで大人たちがクラス続行の為に奮闘した姿は、この後彼らが音楽と縁遠くなったとしても、ずっと記憶に残っていくんじゃないかと思う。
 子供たちの姿がとても生き生きとしている、というか生々しかった。結構えぐい下ネタをイキって言い合う様には、ああこういうノリ苦手だったなーと自分の子供時代を思い出し苦々しい気分に。また、人種・宗教ネタの言い合いもそこそこ出てくるのだが、お互いに一定の信頼関係があるからこそ言い合いとして成立するネタ(つまり関係性が悪い、または殆どない状態だと洒落にならない)で彼らの間ではこのレベルだったら深刻な問題にはならないらしいというニュアンスも面白かった。

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