大学で哲学を教えている教師ジル(エリック・カラヴァカ)は教え子のアリアーヌ(ルイーズ・シュヴィヨット)と同棲している。ある日、ジルの娘ジャンヌ(エステール・ガレル)が転がり込んできた。恋人に振られやぶれかぶれになっていたのだ。同い年のアリアーヌとジャンヌは、ジルの恋人と娘という微妙な関係ながら、徐々に親密になっていく。監督はフィリップ・ガレル。
 ガレル監督作品は一貫して愛、恋愛を描くが、いわゆる美しい恋愛、甘美な恋愛にはあまりお目にかからない。甘美な瞬間はあるかもしれないが一転して苦くなり、時にイタく滑稽だ。ジャンヌの悲壮感と独占欲は空回りする。あなたと付き合ってからすごく自由なの!と言うアリアーヌに対しジルは同意するが、いざ彼女が「自由」である現場を目撃してしまうと嫉妬に悶え全然「自由」ではない。そしてアリアーヌはジルの「自由」に対する言葉を(意外なのだが)額面通りに捉え、後々大後悔する。愛と恋に自由はないのか、愛とは不寛容なのかとため息が出そう。
 アリアーヌとジャンヌは恋愛のあり方も服の好みも対称的で、あまり共通点はないように見える。お互い、ジルを巡るちょっとした嫉妬や混乱もあり、突発的に八つ当たり的な態度を取ったりもする。しかし、そういう行動の後ですぐに謝ったり、フォローしようとする。ほどほどの優しさと思いやりがあり、意外と2人の関係性は心地よさそうなのだ。2人とも方向性は違うが結構真面目で、自分に正直だ。
 アリアーヌは「女ってそういうもの」というように大きい主語をしばしば使うが、ジャンヌにとっての主語は常に「私」であるように思った。女性は何だかんだ言ってもこういうことには耐えられるものなのよと言われても、私は今辛いし耐えられない!というわけだ。ジャンヌは取り乱しているようでいて、自分の感情・欲望をちゃんと理解している。対してアリアーヌは自分の欲望に自覚的でその行使にも躊躇がないが、それがどういうものか(他者との関係性の中でどのように働くか)については意外と無自覚なようにも思った。2人の女性の対称性が、愛の顛末の皮肉さを含めて面白い。女性2人の存在感が強く、ジルはどうも蚊帳の外という感じだった。そもそもいくら口説かれたとは言え、娘と同い年の教え子と密かに同棲って、しょうもない奴だよね・・・。

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