ベルイマン生誕100年映画祭にて。19世紀末のスウェーデン。大邸宅で生まれ育った三姉妹のうち、病身の二女アグネス(ハリエット・アンデルセン)は召使のアンナ(カリ・シルヴォン)と屋敷に留まっていた。結婚した長女カーリン(イングリッド・チューリン)と三女マリア(リヴ・ウルマン)はそれぞれ自分の家庭を持っているが、折に触れて実家に帰省する。カーリンと夫の仲は冷め切っており、マリアはアグネスの主治医と愛人関係にあった。そしてアグネスの死期は近づきつつある。監督はイングマール・ベルイマン。1973年の作品。
 登場人物の顔のアップを挟んでエピソードが切り替わる。これは誰のパートであるか大変わかりやすいのだが、人の顔のアップをじっと見るのって結構ストレかかるんだな・・・。パート切り替え部分以外でも顔のアップが多く、特に不穏な雰囲気が漂ってくる緊迫したシーンで多用されるので、見ているとかなり疲れた。赤を基調とした美術は美しく華やかなのだが、あまりに赤の主張が強くてこれもまた緊張感を強いられる。見ている側を安心させない設計になっているのだ。
 病気を患うアグネスの苦しみは具体的な「叫び」として表れる。しかしカーリンとマリアもまた、それぞれの「叫び」を抱えている。2人とも違った形で愛、生きがいを求めているが満たされない。特に、カーリンの内圧の強さは痛々しいくらい。官能的な描写も多く、特にマリアは官能のおばけのような造形なのだが、それと苦しみが抱き合わせになっている。
 冷徹に振舞うカーリンにマリアは「仲良くなりたい」と訴え、その願いはかなったかのように見える。が、その後の展開が非常に残酷だった。カーリンにとっての「仲良くする」とマリアのそれとは深度が異なる。生真面目なカーリンと「空気読む」タイプのマリアの違いが如実に出ておりまあ切ないの何のって・・・。カーリンが今までいかに孤独だったかがむき出しになるシーンでもあり、痛切だ。3姉妹もその夫も、一見円満だがお互いを理解しているわけでも深く愛しているわけでもない。お互いに他人であることがどんどんむき出しになっていく。精神的に深いつながりを持っているのはアグネスと召使のアンナだけなのだ。


ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)
アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ
光文社
2009-07-09