デニス・ルヘイン著、加賀山卓朗訳
 実父を知らず、父親に関する質問を一切受け付けない辛辣な母親に育てられたレイチェル。母の死後、父親を探し始めるが、手がかりを追ってたどり着いたのは残酷な事実だった。ジャーナリストとして活躍するようになったレイチェルは、ある現場での体験により深く傷つき、結婚生活も仕事も失う。そんな中で真実の愛に巡り合ったと確信するが。
 レイチェルが夫を撃ち殺すという衝撃のプロローグから始まり、彼女の人生と愛の変遷が描かれる。彼女の人生にまとわりつくのは「あなたは誰なのか」という問いであり、「私は誰なのか」という問いでもある。「あなた」はまず父親であり、彼女の前に現れる人たちである。その人たちとの関係が偽りであるなら、その関係の上に成立していた「私」とは一体何者なのか。自分が確信していた愛とは本当に愛と呼べるものだったのか。疑念に突き動かされ止まることができないレイチェルのスピードに読者側も乗っていくようで、一気に読み終えた。ノンストップサスペンスなのに作中時間がかなり長い(レイチェルの人生全般に及んでいるのでそれこそ30年近い)という所も面白い。ルヘインてこういう作品も書くのか!と新鮮だった。題名はヒット曲「Since I Fell for You」からつけられた「Since We Fell」だが、なぜ「We」なのかつかめてくるとより味わい深い。