ワイオミング州のネイティブ・アメリカンの保留地ウィンド・リバーで、ネイティブアメリカンの少女の死体が見つかった。第一発見者になった野生生物局のハンター、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は、雪原の中、喀血して死んでいる少女が娘の友人ナタリー(ケルシー・アスビル)だと気付く。現場から5キロ圏内には民家は一つもなく、夜間の気温は約マイナス30度にもなるのにナタリーは薄着でしかも裸足だった。コリーは部族警察長ベン(グラハム・グリーン)と共にFBIを待つが、やってきたのは新米捜査官のジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)一人だけだった。コリーは土地に関する知識とハンターとしての能力を活かしてジェーンの捜査に協力する。監督はテイラー・シェリダン。
 荒涼とした土地とどこまでも広がる雪原そして雪山、殺伐かつ閉塞した人間関係、不可解な死体、そしてジェレミー・レナーという私の好きなものがぱんぱんに詰まっている、この夏一番楽しみにしていた作品。期待を裏切らない自分好みさと面白さだった。地味な作品ではあるが、お勧めしたい。早川書房あたりから原作小説が出版されていそうな雰囲気だが、映画オリジナル作品。ハンターとしてのスキルを活かすコリーと、まだ不慣れながら職責を全うしようとすジェーンのバディ感もよかった。
 コリーが「(自分の)感情と闘う」という言葉を口にするが、全編がこの言葉に貫かれているように感じた。コリーにしろその元妻にしろ、一見ごく落ち着いた振る舞い、ごく普通のやりとりをしている。しかし彼らの背景には取り返しのつかない出来事があり、怒りと悲しみ、また自責の念といった感情が彼らをずっと苛み続けていると徐々にわかってくる。その感情が人生を侵食し尽くさないよう、コリーは静かに戦ってきたし、これからも戦い続けるのだろう。殺人事件の捜査はその一環でもあるのだ。終盤、ある写真を見た瞬間のコリーの表情、またナタリーの父親とのやりとりが胸を刺す。ナタリーの父親もまた、自分の感情と戦い続けることになるのだろう。戦う人同士の共感のようなものが、コリーとジェーン、そしてナタリーの間にもあるように思った。
 物語のもう一つの主人公は舞台となる土地そのものとも言える。風土の力のようなものが強烈だった。自然環境が厳しいという意味でも強烈なのだが、人が住むには荒涼としすぎており、そこに対する国からのケアというものが感じられない。土地は広大なのに警察官はわずかで手が行き届かないし、FBIも(吹雪に邪魔されたとはいえ)なかなか来ない。外から来た白人たちは、この土地がそもそもどういう土地だったかなど気にもしない。忘れられた土地、忘れられた人々の世界とも言える。そういう土地だから起きた事件であるという事件の真相は、あまりにやりきれない。


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2014-04-02