ジョゼフ・ミッチェル著、上野元美訳
 港や河畔、桟橋等、ニューヨークの水辺で生きる人たち、また摩天楼を臨む町中、あるいは郊外に住む労働者たちのスケッチ。ニューヨーカーのスタッフライターで、同誌の最も優れたライターの一人と言われた著者の作品集。
 収録されている作品の初出を見ると、1940年代から50年代。しかし、全く古さを感じさせず、生き生きとしたタッチで描かれており未だ新鮮。恥ずかしながら著者のことは全く知らなかったのだが、こんな素敵な書き手がいたのか!とこれまた新鮮な気持ちになった。面白い出来事があったから書いた、というよりも、面白い人、興味深い人がいたからその人のことを書いた、という趣。登場する人たちの語り口がとても魅力的だ。特別にドラマティックなエピソードで盛り上げるわけではなく、また著者自身の見解や、書いている対象に対する強い思い入れ等も文面には殆ど出さない。しかし大変面白い。こういう面白さは、一見地味なんだけどなかなかやろうとすると難しいのでは。魚市場や牡蠣が養殖されていた海底(牡蠣が養殖されていたと初めて知った!海がきれいだったんだな・・・。ご多分に漏れず排水による汚染で牡蠣は取れなくなったんだとか)、またネズミがはびこるビルなど、大都市ニューヨークの華やかとは言い難い部分を好んで取り上げているが、どこ・誰に対しても著者の視点がフラットで、そこにあるもの、生きる人に等しく価値があるという姿勢が感じられる。

港の底 (ジョゼフ・ミッチェル作品集)
ジョゼフ ミッチェル
柏書房
2017-11-01