映画祭に招かれたものの、予定より1日早く到着してしまった映画監督のハム・チュンス(チョン・ジェヨン)は、観光名所で魅力的な女性ユン・ヒジョン(キム・ミニ)と出会う。チュンスは彼女をお茶に誘い、更にお酒も入っていい雰囲気になるのだが。監督はホン・サンス。
原題の直訳だと「今は正しくあの時は間違い」という意味になるそうなので、邦題とはちょっとニュアンスが異なる。ただ作品を見ると、どちらの題名もちょっとそぐわないかなという気がしてきた。男女の出会いを2通りの展開で描いた作品で、前半でパターンA、後半でパターンBというような2部構成になっている(A、Bという章タイトルは付けられておらず、私が便宜上そう呼んでるだけ)。
 酔った男女のかけひきって、見ていてこんなにいたたまれないものだったっけ?と見ながらむずむずが止まらない。チョンスは明らかにヒジョンに好意があるが、いい年齢の大人の言動とは言い難い。「かわいい」の連呼なんて泥酔した大学生じゃあるまいし・・・。世間の噂によれば、彼はモテて女癖の悪い人らしいので、成功体験からくる言動なんだろうけど、よくこれで口説き成功してきたな!とは言えヒジョンもやぶさかではない感じだし、成功していると言えばしている。
 とはいえこのいい雰囲気は長くは続かない。AパターンでもBパターンでも何かしらに腰を折られ、険悪か険悪でないかという違いはあれど、2人の人生はすれ違っていく。AとBのどちらが正しくてどちらが間違いかなど、結局わからないのだ。どちらも間違いとも言えるし、交わらない運命だとするならどちらも正しい。曖昧さ、どうともならない儚さと滑稽さが余韻を残す。
 それにしても、ホン・サンス監督作に登場する映画監督は、大概クズ味がひどいな・・・。映画監督として評価はされているが、特に女性関係での脇の甘さや失礼さ(でもそこそこモテるところがイラっとする)は自虐ギャグなんだろうか。

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